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パラレル観測 1


※パラレルのような、そうでないような。
日乱のような、そうでないような、何とも微妙なコネタです。
大人隊長がびっくりするほどロクデナシなので加えて注意☆



なんと勿体ないことをする。

目の前の男をそれとなくねめつけ、ひっそりと息を吐く。
(あんなイイ女、他にいねえぞ)
そう言ってやりたいのはやまやまなれど、だからと云って俺があれこれ口出し出来ることでもない。
そもそも『アイツ』の方にその気がないのだ。
とあらばこれも致し方のないこと。
(まっこと面白かあねえけどな)
何しろ自分の『女』と信じて疑わなかった女は、別の男のものだったのだ。
ばかりか、肝心の『オレ』はとんでもねえろくでなし。
いらねえっつッてんのにも関わらず、今も無理やりのように連れ出されていた。
――娼妓の侍る色街へと。
「せっかくだから、遊んでいけよ」
笑った顔を、力任せに殴り飛ばしてやりたいと思う。
「いらねえ。つーか、松本に悪リィ」
「は?今ここにいない『松本』に操立てたってしょうがねえだろ」
ぬけぬけと抜かす目の前の男に、だが俺が手を出さずに済んだのは、俺の代わりに松本が、ヤツへと鉄拳を見舞ってくれたからに他ならない。
「はいはーい、遊び人のたいちょは黙ってて下さーい!」
「いっ…て、松本てめえ!!」
「あーもう、うっさいうっさい!コドモになんてことを吹き込んでやがりますかね、貴方ってひとは!」
鼻息も荒く言ってのけた松本は、追い打ちとばかりにもう一度、腕を高く振り上げて『オレ』の頭をぺちりと叩いたのだった。
頭をはたかれ、いてえなあとごちる『オレ』。
そんな『オレ』を呆れ眼に見上げる俺と、『オレ』へと向けて悪態を吐く松本と。
――うん。シュールなことこの上ない。
そもそもこの場に俺がふたりいることからしてもうイロイロとおかしいことは承知なのだが、…実際いるのだ。
俺と、オレが。
この世界の『オレ』たる日番谷冬獅郎と、この世界へと迷い込んできた『俺』たる日番谷冬獅郎と。
尚、義骸ではない。
ドッペルゲンガーってヤツでもない。
俺はあくまで日番谷冬獅郎であり、夢でも幻でもなかった。
言うなれば、別の世界線上に存在する日番谷冬獅郎なのだった。
何故そう言い切れるかと云えば、この世界線に於いての日番谷冬獅郎は、とうに体躯も育った大人のナリをしているのだが、今ここに在る『俺』は、まだ発展途上。
身の丈百五十そこそこのガキのナリをしているからだ。
とあらばここは、何十年後かはたまた何百年後かはわからんが、未来…ってヤツか?と思いもしたのだが、この世界線の『オレ』は霊王護神大戦から然程時を置かずして、めきめきと成長の兆しを見せ始めたと云うから、霊王護神大戦から百余年を経て漸く成長期を迎えた俺とでは、時期が合わない。
否、下手をすれば俺の方が、こちらの『オレ』より年月を重ねているやもしれなかったのだ。
――それに。
噛み合わないのだ。他にも、諸々と。
いずれもほんのささやかな齟齬ではあるが、『俺』と『オレ』とでは認識がズレる。
記憶が違う。
その最たるが、松本乱菊――俺とオレの部下たる女にこそあった。
驚いたのだ。
だって何で俺でない男と付き合ってんだ?













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あきゅろす。
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