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たまごから王冠への階調

※『慈愛のうばら』、『君のための四つ葉の王冠』のそのまた続きのふたりとか


やだ、大変。
おーさまってばご乱心?


茶化すつもりは微塵もないけど、ちょっと俄かには信じがたい事態。
…そりゃあ、おーさま随分変わったなーって、思ってたけども。
なんか、やさしいし。
最初の頃の、とげとげしさもなくなってるし。
世継ぎを産んだにも関わらず、今以って閨も共にしてるし。
挙句、「次はまた女の子がいいな」とか言っちゃってるので、このひとあたしに何人産ませるつもりでいるのかしらとか、思ってたのよ。実際のところ。
そしたら、好きだって。
惚れてるって。あたしのこと。
(わあお!)
それも、真っ赤な顔して言っちゃう?
すっごい照れ臭そうな顔。
眉間の皴も、今はまったく見当たらないから、ちょっと意表を衝かれた次第。
しかも、側妃はいらないって。
傍に置くのは生涯あたしひとりでいいって。
…本気かしら?
選り取り見取りの癖して言っちゃう?
六つも年嵩の、しかも元々他の男と婚約していたあたしなんかに操を立てちゃいますか、おーさまなのに!
こーんなイケメンに育ったのに。
この五年余りで背だって伸びてあたしのこと、見下ろすぐらいには大きくなったのに?
(なんか…意外)
昔はあたしみたいな女、毛嫌いしていたひとなのにねえ。
見るからに愛らしい、清楚な雰囲気の子が好みのタイプだったと云うのに、変われば変わるものよねえ。
「でもあたし、おーさまの好みのタイプと真逆ですよー?」
それでもいいんです?
毒薔薇姫のあたしですよ、って。
訝るように問うたなら、
「はあ?好みもクソもあるか、あほ。だいたいおま、今更『姫』って柄でも年でもねえだろ。王妃だろ」
…ですって!
うわあ、辛辣ですねー。
てゆかそれ、とても惚れた女に向けて言う科白ではないですねー。
(そんなんだからこのひと、本命のご令嬢にも逃げられちゃうんじゃないの?)
恨みがましくちょっとジト目で睨んでやったのは言うまでもない。
だけどおーさまは、どうやらやっぱりあたしのよく知るおーさまだったらしい。


「そもそもお前が『毒薔薇』なんぞあり得ねえだろ。つーか、言うなら向日葵だろ。カスミソウだろ。んで、たんぽぽみてえでもあんだろが。菫でもあるし、パンジーでもある。時に水仙のようでもあるな。…つか、着飾ったお前は俺の目には、世にも高貴な薔薇に見えんぞ」


なな…なんと云うド直球!
これまであたしが見聞きしてきた、貴族の男共が口にするような、ちょっぴり気障な美辞麗句からはおよそ程遠い。
だけどとってもこのひとらしい。
不器用。
真面目。
て云うか、見え透いた美辞麗句で褒め称えられるよりか、よっぽどこっ恥ずかしいわよ。
なんだ、世にも高貴な薔薇って。
ああああ、ほんっっとこのひと…このひと…!!
しかも言った傍から照れないで下さいよ。
ああもう、あたしにまで照れが移るじゃないですか。
思わず腕に抱いていた王女を力任せに抱き潰す勢いでしたよ、ちょっとー!
「ッオイ!何やってんだ、バカ!」
慌てた様子であたしの腕から王女を抱き上げたおーさまは、ふにゃふにゃとむずがる王女の背中をとんとんとやさしく撫でてあやしている。
――その、頬に。
そっとくちびるを寄せて、くちづけて。


「…あたしも。大好きです、おーさま」


それじゃあ、ずーっとあたしだけのおーさまでいて下さいねって甘えて見せたら、「当たり前だ!」って。
感極まったようにその腕の中に、王女ごと抱き込まれていた。







end.

慈愛のうばらのその後のふたりが見たいと云うリクを頂いたので、ちょろっとだけですが後日談とか。
誰が何と言おうとおも、今のおーさま日番谷にとって王妃松本は、美しくもあり愛らしくもある、ありとあらゆる花に例えられる存在になってんじゃねえの?と云う妄想です。
娘ちゃん、眠たいのになかなか寝かせてもらえなさそうで可哀想ですが、それもまた幸せ家族の一風景と思って頂ければw


お題:alkalism


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あきゅろす。
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