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2.


王国と帝国の婚姻は絶対的に不可欠であって、そもそもあたしは亡くなった元王太子の許嫁であったのだ。
けれど彼が身罷った今、自動的にあたしは新たな王太子――次期国王の婚約者となる。
…そう、あたしが『王妃』となることにこの婚姻の意味があるのだ。
だからこのひとが何と言おうと、あたしからの婚約破棄など先ずあり得ない。
かと言って、新たな王となったこのひと自らの婚約破棄など以っての外。
如何な理由があろうとも、わがまま如きで帝国を敵に回せるわけがないのだ。
それがわかっているから憤っている。
こうも機嫌が悪いのだ。
らしくもない弱音を吐いて、肩なんて落としちゃっている。
年相応に拗ねている次第と云うわけだった。
(それにしても…)
言ってくれるじゃないのよ、あたし本人を目の前にしてさ。
他に好きな女がいるって言っちゃう?普通。
それにしたってもうちょっと、何とか取り繕うぐらいのことしてちょうだいよ。
これ、相手があたしじゃなかったら、帝国からそっこー攻め込まれても仕方ないですよ、おーさま。
喧嘩吹っ掛けてんのも同然です。
なんて思いながら、手にした扇を閉じたり開いたり。
暫し弄んでから、零す溜息。
「なら、側妃として迎え入れられたらどうです?」
埒が明かないから、一応こっちから折れてみた次第。
だってそこまで好きだと言うのなら、それが一番穏便に済む方法だと思うの。
なのにおーさまったら、目の色変えて声を張り上げた。
「出来るか、あほ!」
…うんまあ、そんな気はしてました。
「何も俺はあいつをそんな日陰の身に置きたいわけじゃねえ!」
鬼気迫る顔で噛み付くも、
「では、あたしの代わりに王妃として迎え入れたいと?」
ならば、と。
試すように問い質せば、途端うぐうと言葉に詰まる。
きょどきょどと泳ぎ出す視線。
「……いや、それは。さすがに…無理、だろうな」
はい、よく出来ましたー。
ですよね、どう考えても無理ですよねえええ!
おわかり頂けて何よりです。









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