[携帯モード] [URL送信]
14.


それは付き合い出してから、およそ三ヶ月目。
クリスマスプレゼントにちゅーが欲しいな!って、図々しくも初ちゅーをおねだりをしたあたしに向けて、一瞬戸惑ったみたいな顔をして。
「…それ、物じゃダメなのか?」
速攻譲歩案を突き付けてきた日番谷は、けれど「やだやだ!日番谷とのちゅーがいい!!」と聞く耳持たないあたしに結局、しょうがねえなあと折れたようにそっとくちづけてくれたのだった。


「ああ。…まあ、そうだな」
そんなもんでいいのかよ!って逆に驚いたから、ほんとに他に欲しいもんはねえのかって念押ししたな――…って、日番谷あああ!!
ちょっとあんた今なんつった!?
そっち?!
そっちの意味で「物じゃダメなのか?」って聞いたの、あれ!?
うっそーん!
てっきりあたしとのちゅーなんざ冗談じゃねえ。
いっそ物で勘弁してくれの意味だと思ってましたー!!
(えええー!?)
そんな今になって明かされた馬鹿げた真実に、驚倒しなかった筈がない。

「は?つーか当たり前だろ。俺の誕生日にクリスマスにってさんざプレゼント貰っといて、お前にばっか金使わせといて、そのお返しがキスひとつでいいっておかしいだろ。どう考えても割に合わねえだろ」
「あ。もしかして、だからホワイトデイのお返しに、あんなたっかいお店でご飯奢ってくれたんだ!誕生日にネックレスとか奮発してくれたんだ!」
「はあ?それでも割に合わねえだろ、お前。だいたいなあ、バレンタインのチョコ一個作んのにどんだけチョコ買って練習したんだよ。スーパーで手作りチョコの材料かごに山盛り一杯買ってたって聞いた時はさすがに軽く引いたぞ俺は」

げげ。知られてたんだ。
…うんまあ、実はあんまり料理とかって得意じゃないので。
基本、お菓子は買って食べる派なので。
そんなだから、そもそも本命チョコとか手作りするのも初めてだったのよう!
いやあ、お菓子作りって結構大変なのねえ、もうびっくりよ。
さんざへまして失敗して、辛うじて食べられそうなトリュフがやっとのことで完成したのだ。
(まあ、初心者が下手にフォンダンショコラとかティラミスとかに手え出すもんじゃないってことよねー)
あれはいい勉強になりました。…ちーん。
そんななんちゃってトリュフのお返しが、割とお高めと噂のイタリアンだったことに、正直あの時ちょっと戸惑っていた。
むしろお手軽美味しいサイゼリヤでないことに驚きだった。
――もしやこれは…何かの厭味だったりしますかね?
いえ。ティラミスとっても美味しいです。
あたしの作ったブツとは雲泥の差です!
そんな風に思っていたあの時のあたしの心境たるや…。
だけどどうやらそうではなかった模様。
あたしが「おいしいパスタが食べたーい!」って、いつぞや話していたのを憶えてて、イタリアンの美味しいお店をわざわざ探してくれたのだった。
(わっかりにく!!)
と云うか、そういうことならちゃんと言ってよ。
もうちょっとわかりやすい態度で示してよ。
そうでなかったら勘違いする。
(てゆーか、してたし。実際)
それでも何とか一年持ったのは、恐らくあたしがこういう性格だったから。
めげない。
負けない。
へこたれない。
概ね前向き。
イケイケ押せ押せに猪突猛進だったから。
…まあ、だからこそ日番谷も、わかりにくいとこ変わらなかったのかもだけど。
あんまりあたしが変わらないから。
好き好き纏わり付いていたから。
日番谷としても慢心してて、態度を変える必要性を感じられなかったのかもしれないなあと、今になってあたしを好きだとのたまう日番谷を前にふと思う。









[*前へ][次へ#]

14/15ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!