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11.


ぶっちょヅラだし。
笑いかけてくれることだってないし。
べたべたされると不機嫌になるし。
そもそも甘い言葉のひとつも言われたことないし。
それでいて好きとか、幾らなんでも信憑性に乏しい。
と云うかぶっちゃけ胡散臭い。
…だいたい、あんた。
「はあ?だってあんた、いるでしょ好きな子。さっきのあの子!」
言いたくなんてなかったけど。
惨めなだけだから言いたくなんてなかったんだけど、いい加減ブチ切れてぶち撒けてやった――その先で。
「……は?」
思いも寄らないことを言われたと云わんばかりに呆然と問うた日番谷は、怪訝に眉根を寄せている。
「ちょっと待て、さっきの…って何だ?」
ありゃあ黒崎の彼女だぞ、って。
そんなことはわかってますー。
「っだから!好きなんでしょあんた、あの子のこと。なのに取られちゃったんでしょ!それは…かわいそうだけど。あわよくば弱ってるところに付け込んでってのも確かにアリかもだけど。ッでも、それで仕方なくとかあたし使って憂さ晴らしとか、幾らなんでもやだからね!そーゆー男は幾らあんたでもお断りなの!」
見た目こんなだし、こんな性格のあたしだし。
軽そう。
それこそ、頭も尻も軽そう。
割とそんな風に見られがちなあたしだけど、その実案外乙女なんです。一途なんですー。
身代わりにされて喜ぶマゾでもないんですーだ。
「だからそんな嘘やめてよ。あんた、あたしのことなんて何とも思ってないでしょ。てか、タイプじゃねえって言ったじゃない。あれ、忘れてないんだからね、バカー!」
そうだよ。そもそも、タイプじゃないって言われてんのよあたし。
それでいて好きとか何言ってんの?忘れてんの?
…あれ?こんな適当な子だったっけ日番谷って。
こんな適当なこと言っちゃうようなヤツだっけ?
なんて思ってまた凹む。
そんな嘘で簡単に言い包められるほど軽い女と見做されていたような気がして。
あああたし、この子のことわかってたようなつもりでいて、その実なーんにもわかってなんていなかったんだな。
上辺ばっかり見てたのかしらと思ってじくじくと痛む胸。
(見る目、ない。あたし)
つくづく男を見る目がないんだなあと改めて、しょんぼり凹んだその時のことだ。


「……あ、あほかああああ!!」


それまで言葉を失くして固まっていた日番谷が、一転我に返ったようにいつもの怒声を上げたのは。
だけどその顔は、明らかにいつもと様子が違う。
ちょっと焦ってる?青ざめている?
それでいてどこか困っている。
無論、呆れているようでもある。
「やべえ、最早どこからツッコんだらいいのかわからん」
そんな失礼なことを抜かしてもいる。
とにかく尋常でないぐらいにはうろたえていることに間違いはないようなので、いつにない様子に虚を衝かれたのは言うまでもない。
「ひっ、ひつがや?」
あんたいったいどうしたのよ、と。
口にしかけたところで遮られた。
否、正確には言葉を失ってしまった。
――日番谷、の。
腕の中へと抱き締められて。

「嘘じゃねえから。…好きだから」
今までちゃんと言葉にしなくて悪リィ。

そんな風に詫びられて、言葉を失ってしまったのだった。









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