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10.



「答えねえとわっかんねえよ」
なあ、どうなんだ松本…って。
尚も答えを促す日番谷の顔が更にぼやけて見えなくなる。
ぼろぼろぼろぼろ溢れ出す涙。
止まらなくなって、手の甲で目元を覆ったら、視界はとうとう真っ暗になった。
だからわからなかったのだ。
果たしてその時日番谷が、どんな顔をしていたかなんて。
酷く焦ったような顔をしていた。
軽く衝撃を受けていた。
そんなことも知らずに口に出していた、日番谷を否定する「イヤだ」の言葉。

「う…憂さ晴らしにやられるだけなんて、ずえ〜〜ったいに御免なんだからあ!」

そりゃあ、日番谷のことは好きだけど。
大好きだけど。
さんざあたしから迫ってたわけなんだけど。
でもそれってば日番谷に好きな子がいなかったからであって、一応でもあたしがカノジョだったから。
日番谷が、一応であってもあたしをカノジョにしてくれたから。
だけどちゃあんと好きな子がいて、振られて尚引き摺っているとあらば論外だ。
望んだところで手に入らない他の『誰か』の代わりとか、失恋の自暴自棄とかそんな理由で迫られたところで、まったく以って嬉しくないに決まっている。
むしろ虚しいだけだと思ったから。

「すっ好きでもないのにこんな時ばっかりやる気出す日番谷なんて、やだ!キライ!!」

尚もえぐえぐと恨み言を零せば、
「……ふっざけんなよ」
不機嫌にも吐き捨てられてしまったから。
(あ、もうこれで終わりかな?)
日番谷の意向によって、何故か一旦は保留にされた別れ話だったけれども、元々日番谷に別れることに異論はなかったんだし、あっさりサクッとここで振られて終わるだけでしょ。
これで決まりでしょ。
決定的でしょ。
おしまいでしょって浮かぶ自嘲。
(だってキライって言っちゃったし)
だからもういいや。
どうでもいいや。
帰ってしこたま飲んで寝よう。
中島みゆきは諦めて、ひと先ず明日の合コンに備えて今夜は早々寝てしまおうと改めて、心に誓ったその時のことだ。
目元を覆っていた腕を掴まれて、涙で滲んだ視界の向こう、飛び込んで来た日番谷の顔。


「ッ好きに決まってんだろ!!」


何とも思ってねえのに抱いたりするかよ!
家にだって連れて来ねえし、そもそも付き合ったりしねえ!!…って。
断じる顔は何だか必死だ。
…や、涙でぼやけてあんまりよくわっかんないんだけど。
だけどそれ以上に虚を衝かれた。
へ?
好き?
好きなのこの子、あたしのこと。
(うっそだあ!)









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