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8.



見下ろして。
「お前…『れん』って言うのか?」
問うた先。
小さくこくりと頷いた子供は。
「まつもとれんっていうの」
と、はにかみながら自分の名前を口にした。
やはり苗字は『松本』だった。
そのことに、思わず漏れ出す安堵の息。
そしてハタと思い至った。
「れん…?」
「うん。あのね、蓮華の『蓮』ってかくんだよ」
「ああ、…だろうな」

――松本蓮。

どうやらそれがこの子供の名前らしい。
蓮…蓮ねえ。
およそあの女がつけたとは思えないセンス、およそ女の子らしくない名前だと思う。
だが、ぶっちゃけてしまうと俺は、その『蓮』と云う名前にだって思い当たる節があったのだ。
否――今になって思い出した。
その名を聞いた、その瞬間に。




*
*


それはまだ俺が松本と付き合い始めたばかりの頃のことだ。
二人で観ようと何本か、適当にレンタルしてきた映画のDVD。
その内の一本に出てきた主役の息子の名前が件の『蓮』だったのだ。
(タイトルは確か『オルゴール』だっただろうか?)
然程期待せず観ていたのだが、予想以上にその映画の世界観に嵌った俺が、観終わった直後に口にした言葉。
「蓮、って。ちょっといい名前だよな」
本当に、たわむれに。
戯れ言のように口にした言葉。


―俺も将来子供が出来たら、『蓮』って名前にしてえかも。
―『日番谷 蓮』とかカッコいいよな。


だからって。
何も本気で未来を見越したわけじゃない。
多分、その場の勢いだけで口にした。
深い意味なんて何もなかった。
そんなガキの戯れ言を、アイツは果たして憶えていたのだろうか。
憶えていて…。
この名を付けたと思ってもいいのだろうか。

「…つか、俺は『男』だったら・つった筈だぞ、あの野郎」

ボソリと口にしたのと同時に、淡い金糸へと向けて手を伸ばす。
きょとんと瞬くまあるい瞳。
そのやわらかな金糸の頂に触れ、くしゃりと髪を掻き撫ぜたなら。
アイツに良く似た眼差しで、花開くようにふうわりと子供が微笑んだ。











ここまでくれば殆どの方がお気付きかな?と思いますが、今回このパラレルの元ネタにさせて頂いたのは、EJINさんの描かれた大人たいちょと娘ちゃん(&設定)でございます。
あのほのぼの絵からこのネタかいー!!と思われた方が殆どだろうなと思いますが、すみません☆一応EJINさんのご了承は得ておりますので苦情はスルーでお願いします><;
因みに蓮ちゃんの名前の由来ですが、ある意味実話だったり…(笑)←そう云う方、何気に多いみたいですね^^;

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