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8.


「オイ」
「ふおっ!?」
「顔、おもっきしニヤケてんぞ。みっともねえから普通にしてろ」
…あらま、ニヤケてましたかあたし。
あれ?おっかしーなあ。
切ない気持ちでいっぱいだったつもりなんだけど。
そんなニヤケてましたかね、今あたし?
そんなヤバかったです?
まあ、こんなことはそうそうないので。
繋いでいる手をちょっとブンブン振り回したいとか思ってるのが顔に出てます?
「…振り回すなよ?」
あ、出てたんだ。バレてましたか。
釘を刺されてしまったので、うずうずしていた右手に渇を入れてステイを命じる。
代わりにほんの少しだけ、繋いだ指先に力を込めたなら、応えるように日番谷の手が、あたしの右手をやさしく握り返してくれたのだった。







そのまま大学を後にしたあたしと日番谷は、電車を乗り継ぎ通い馴れて久しい日番谷の自宅へと向かう。
「あれ?そう云えばご飯は?」
「あー…、後でいい」
腹減ってんのも忘れてたわ、と。
適当なことを言う日番谷は、大学から少し離れた郊外の住宅地にある一軒家で、今はおばあちゃんとのふたり暮らしだ。
他に両親と年の離れた妹がいるらしいんだけど、お父さんの転勤先で暮らしていると前に聞いている。
「ばあちゃん旅行で、木曜からいねえんだよ」
なるほど。
それじゃあ家にお米しかないわけである。
「チャーハンぐらいなら作れるけど?」
「ん。じゃあ、米炊くわ」
冷凍庫にハムと…たまねぎもあったかな?って、首を傾げる日番谷に続いて、おじゃましますと潜る玄関。
だけど手はまだ繋がれたまま。
あ、あれ?キッチン通り過ぎてますがな。
「え?お米は?」
「後でいい」
いいんだ!って驚く間もなく部屋へと通されて。
「んうっ!?」
不意に塞がれるくちびる。
「…で?何で俺と別れるなんつー話になってんだ?」
極、至近距離。
改めて射竦められて、その尋常でない眼力に、ひっ!と縮み上がったのは言うまでもない。










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