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6.



「ライン?」
「ん。黒崎からだ」
ああ。時々この子と一緒にいる、オレンジ頭のあの子のことか。
(確か高校からの友達なんだっけ?)
大学まで一緒とか、仲いいのねーって確か驚いた憶えがある。
まあ、さすがに学部は違うみたいなんだけど。
ワリ、ってまずあたしに前置いてからスマホを確認する、そういうところも何気に好きだったりする。
「えー、なあに?もしかして遊びのお誘いとか?」
だったら都合いいんだけどなと思いながら、それとなーく水を向けるも、即座に「違げえ」と否定が入る。
――っくそう。

「うまく行ったんだと」
「…はい?」
「付き合うことになったっつッて、写真付きで報告来た」
「はあ?!」

わけもわからず首を傾げたあたしの前に、ずずいと突き付けられたラインの画像。
…って、ちょっと待ってちょっと待って!
黒崎少年から送られてきてるこの写真。
写っているのはもしや、先日日番谷が熱い眼差しを送っていた女の子では!?
(え!?何この子、まさか友達の好きな子好きになっちゃったのー!?)
やさしいブラウンの髪。
天真爛漫を絵に描いたような笑顔を浮かべた女の子を、とびきりやわらかな眼差しで見つめていた、あの日の日番谷の横顔をふと思い出す。
あの時確信してしまった失恋。
だけどよもやまさか日番谷までも失恋してたとか驚きだ。
だって送られてきた写真の中でその女の子は、明らかに黒崎少年の隣でガッチガチに緊張している。
好き好きオーラ全開だったんだもの。
…まあ、隣の黒崎少年も、大概照れ臭そうにしてたんだけど。
(わあもう、何この初々しいバカップル!!)
くっそう、羨ましいとか言わないんだから!
うぐぐと胸中歯噛みしつつも、何と返してよいのかわからない。
…え?これ、よかったねとか言ってもいいの?
いやでもこの子は失恋したわけで。
あれ?
てゆーことは、ご愁傷様?
いやいや、いくら何でもそれはちょっと…。
ぐるぐるぐるぐる迷走してたら、
「なんつー顔してんだ、お前」
と、軽く引かれてましたよ。ちーん。
再びスマホを手元に戻して、『そりゃあよかった』とひと言打ち込み返信をして、すぐにも再びしまい込まれてしまった日番谷のスマホ。
…まあ、そりゃあ長く見てたいものでもないわよねえ?
どうにも居た堪れないあたしの気持ちを知ってか知らずか、日番谷は尚も良かったとばかりに穏やかに笑んだまま。
それがどうにも切なくて。
二度に渡って失恋してしまったであろう日番谷の、女運のなさと健気さに心打たれて。
「うおっ!?」
わあ、もう!
思わずどかんと抱き着いてしまったではないか。
ああもう、こーんなイケメンなのに。カッコいいのに。
可愛いのに。
なんっっでみんな日番谷の良さに気が付かないかなあ?!
それでいてあたしに見向きもしない。
ちーっとも振り向いてくれない。やさしくない。
そんな日番谷が憎たらしくて意地悪だから、勢い余って抱き締めてしまった。
ぐりぐりと肩口に頭を押し付けたなら、いてえ!化粧が付く!と、やっぱり冷たい。ひどい…。
「うう、日番谷が冷たいっ!」
「あったり前だ!時と場所とを弁えろ!!」
どーなーるーしーっ!!
しかも、チッ!って舌打ちするしっ。
だけどこれ以上日番谷にキラワレルのもアレなので。
そもそも好かれてもないあたしなので。
しぶしぶと抱き締めていた腕を緩める。身を起こす。
ごめんと距離を取ろうとして、――だけど何でか引き留められた。
逆にその腕の中に抱き締められて。…あれれ?
これってばいったい何?










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