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3.


こっちが「何で?」って言いたい気分だ。
あれ?おっかしいな。
あたしの方からの別れ話なんて、もっと喜ぶものと思ってたんだけど。
ホッと安堵されると思ってましたけれども。
なんか訝ってる?
怪しまれてる?
(まあ、そりゃそうか)
なんせ今までが今までなので。
うざいぐらいには付き纏っていた女なので。
そりゃあ気味悪く思われもするか。
何企んでやがるって顔にもなりますよねー。
身から出た錆とは云え、きっとずっと待ち侘びていただろう別れ話を切り出しといて疑心暗鬼に駆られるのってばちょと切ない。
(うう…最後までカッコつかないなあ)
いい想い出になった。
楽しかった。
これまで振り回して悪かったわね。
じゃあ、バイバイ。
そんな風ににっこり笑ってさよならをして、部屋に帰ってさあ泣いてやるー!
ヤケ酒呷って中島みゆきでも聴きまくってやる!
それで合コンにでも行こ。
飲んで騒いで、もっと他にイイ男を見つけてやるわよ。
あんたなんか速攻忘れてやるんだからー!との決意も新たに、そっと拭った心の涙。
「えー。何で、って。それ、日番谷が言う?」
「そりゃあ言うだろ。俺がお前を振るならまだしも、なんっっであんなしつこく付き纏って告って来た、お前の方から別れ話を切り出されなきゃなんねんだっつの。ふっざけんなよ、てめえ」
にへらと笑って軽口を装い応じるも、相対する日番谷の眼光の鋭さは増すばかり。
(いやん、カッコいい!)
なんてときめいてる場合じゃないのに。
あーやっぱりカッコいいなあ。
かーわいいなあ。
好きだなあ。
などと、いちいち胸ときめかせてしまうのだから、あたしと云う女は本当に…。
ダメダメもいいとこだろう。
てゆーかあたし、振られるの前提ですか。そうですか。
まあ、知ってたけどね!
あれだけ毎日好き好き言ってて、あたしの方から別れ話切り出してたら、そりゃあ不審にも思いますよね。ムカつきだってしますよねええ!!
うん、知ってた!
でもでもこれってば、あくまで表面上。
実質あたしがフラレたも同然だと思うのよ。
そもそもあんた、あたしのことなんて何とも思ってなかったじゃないよう。
端からフラレてますがな、あたし。
だからそんなに腹立てなくってもいいじゃない?
涙を呑んで身を引きますって言ってんだからさ、そーんな追い詰めなくてもいいじゃないよう。
何よう、あんたって意外と心狭いのね!って、ちょっと怯んでしまった。――その時のことだ。


「別れねえから」


これまた何とも意外な答えが返ってきたのは。











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あきゅろす。
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