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2.


*
*

そんなつもりじゃなかったのだけれど。
…愛妻の日、だなんて。
いっそ口に出さなければ良かったのかもしれない。

困らせるつもりなんかじゃなかったのに。
恨み言のつもりなんて、これっぽちもなかったのよ。本当に。
だからどうかそんな顔をしないで欲しい。
今更のようにふと思っては、後悔に駆られる。
「いいんだ。俺にとっての『妻』は、後にも先にもお前ひとりしかいねえんだから」
…ごめんなって不器用に笑う、その笑顔が哀しい。胸に痛い。
(お願いだから、そんな顔をしないで欲しい)
本当は、あたしから身を引くべきだったのに。
この婚姻に納得するもしないももう既に、このひとがあたし以外のひとと籍を入れてしまった以上、さよならを告げて奥さんとなったひとの元へと送り出すべきだったのに。
そんな風に悲しげに、縋るように笑う姿を見てしまったら、とてもじゃないけど「もう、お終いにしましょう」なんて切り出せなくて。
これっきり、あたしのことは忘れて下さい、なんて。
諭すことだって出来なくて。
結局は、なし崩し。
受け入れてしまう。
向けられる執着を、嬉しいと思ってしまったから。


「俺の『妻』と云う肩書も、日番谷と云う俺の名前もくれてやれない。花嫁衣装も着せてやれなかったお前にせめて、罪滅ぼしじゃねえが出来うる限りのことをしてやりてえんだ」


――だからどうか見捨てないでくれ。
傍に居てくれ。
どうかどこにも行かないでくれ。
繰り返し懇願する、縋るようにあたしを抱くこのひとの苦しみを、少しでも共に分かち合いたいと思うから。
やっぱり突き放すことなんて出来なくて…。
きっと今もひとり、このひとの帰りを待っているだろうあのひとの気持を慮ることだって出来やしない。
…この、ひとの。
たったひとりの『女』として命を散らす。
決めてしまったから、振り返らない。もう戻れない。







愛妻の日、なんて。
…なんて皮肉な夜なんでしょう。
けれど明けない夜なんてない。
ひと晩経てば、日付は変わる。
何食わぬ顔で、いつもと変わらぬ朝を迎える。
何処の誰かも知らない人間が、頃合わせに名付けた『愛妻の日』と云う名の一日が終わる瞬間を、こんなにも今待ち侘びている。
このひとの腕に抱かれて眠るあたしも。
…帰らぬこのひとを待つあのひとも。







end.


1/31は『愛妻の日』なんだ〜と思った矢先にふと浮かんだコネタとか。だがちょっと待て、全然愛妻関係ねえええええ!/(^o^)\
中にはご記憶の方もいらっしゃるかと思いますが、随分昔にブログに投下した大人日乱の派生ネタです。いつか続きを書こう書こうと思いつつ、放置している劇物です。(違う)
松本との結婚を目前に別の女と結婚するより他なくなった日番谷と、そんな日番谷に絡め取られて逃れられずにいる松本のコネタなのですが。まあ、暗いw
何でこんなの書こうと思い立ったのか今では思い出せないぐらい遠い昔の産物です。多分まだブログのどっかに埋もれてる筈…。
とりあえずこの日番谷は離婚してないし出来ないし、多分一生無理なんだけど、ずっと松本と添って生きるつもり。そんで多分松本も離れられないから十番隊のみんな頑張れ!っていう(^q^)
これぞ正に誰得コネタでほんとさーせん☆細かい設定は一切気にせず、ノリと雰囲気でさらっと読み流して頂ければ。

お題:alkalism

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