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6.


「えー。あたし、七つも年上の女なのに?」
「バーカ。お前だから惚れたんだろ」
着飾ることにしか興味ねえ、そこらの女だったら惚れてねえ、なんて嬉しいことを良くも言う。
「なによう。あたしのこと、まちゅもと!なんて呼んでたお子ちゃまのくせにっ」
「いつの話だよ。つーか記憶にねえし」
「あら、冷たい。あんな毎日毎晩一緒に居たのに?お風呂も一緒に入ったのに?」
「くっそ、ムカつくなガキの俺。一緒に風呂なんざ、今の俺だって入ったことねえぞ」
「あら、一緒に入りたかったんです?」
「ったりめーだ。今度やる」
俺がピッカピカに洗ってやる…って、目が恐いですおーさま。


「だいたい俺ァ占いなんざ端から信じてねえし、恩人であるお前を離縁して追い出すような真似、誓ってしねえよ。ンなことしたらお前ンところの親父だけでなく、この国の貴族連中並びに議会、民衆みんなに石投げ付けられるわ。誰のおかげで今この国があると思ってんだ!ってな」


つーかお前を差し置いて、俺の愛妾になりてえなんて女がこの国にいるかよ、あほ!
その女こそ石投げられて国外追放されるに決まってるわ!…なんて。
何とも嬉しいことを言ってくれる。
「いやだ。あたしもしかして、何気にみんなに愛されてます?」
「腹の立つことにな。みんなお前がいたから今の俺が在るってわかってんだよ、ちゃあんとな。…で、感謝してるし敬愛してる。誇りに思ってんだよ。為政者として。王妃として」
だからいい加減諦めて、名実ともに俺のもんになってくれ。
希うように口にして、寝台へとゆっくり横たえられた身体。

――ああ、つまりはそう云うこと?

圧し掛かるあのひとの顔をゆっくり見上げて、その最中。
ふと脳裏を過ぎった確信。
(一国の『王女』として、ではなく。もとよりこの国を導く『為政者』としてこのひとの元に嫁いだから)
だから万事上手く行ったってことなのかしら、もしかして。
「仮に…ぜってえあり得ねえ話だけど、もし万が一俺がお前を裏切ったとしてそン時国を追われんのは俺の方だ。非難されんのも多分俺だし、通じた女諸共フルボッコにされんだろうよ。まあ、そもそもお前がいるのに色目使うようなバカな女も、自分の娘を俺に宛がおうって脳なし貴族も先ずこの国にはいねえだろうがな!」
おーさま自身がそう断言しちゃうぐらいには、どうにもあたしに都合いい土壌が出来上がってるのってば、そーゆーこと?
まあまあね、そうは言っても仮にこの国にそーゆーお相手が見つからなくとも、他所の国に浮気相手が出来ないとも限らないわけなんですけども。
だけどその場合も、追い出されるのは絶対自分の方だって言っちゃってるし、このひと。
そもそもあたしを蔑ろにすること自体、絶対あり得ないとか言ってるし。
「ガキの執着舐めんなよ?」
って、恐い恐い!
こんなこと言うひと、これまであたしの周りにはいなかった。
こんな風に温かくあたしを受け入れてくれる国もなかった。
それこそ、祖国の貴族達ですらあたしとの婚姻を嫌がったのに…。









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あきゅろす。
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