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6.


後ろ手に身体を支えて、空いたもう片方の手で松本の腰を抱き寄せて。
交わす、目覚めの深いくちづけ。
――ああ、今日は一日マジで仕事になんねえな。
「たいちょ、ところでこの後隊首会ってご存知です?」
「は?マジか?つか、ここまで煽っといて鬼だなお前も」
帯を解く手を慌てて押し留められて、つい舌を打ち鳴らす。
あー、そういやそうだった。
くっそめんどくせえことこの上ねえが。

「しゃあねえなあ、お楽しみは夜まで我慢するしかねえか」
「朝一でひとに無体働いといて、まーだそゆこと言っちゃいます?」
「ありゃあてめえが浮気白状したからだろ」
「っはあ!?してませんー!断じてあれは浮気じゃないですー!隊長でしたー!!」

納得いかないって顔をして、再びぷうと剥れた松本は。
けれど、はたと何かに気が付いたように目を丸くする。
ぱしぱしと瞬かせるから。
「なんだ、どしたよ?」
不思議に思って問い掛けたなら、途端にんまりと悪い笑みを浮かべる。
からかうように眇めた空色の瞳。
それからそっと俺の耳元にくちびるを寄せて。

「たいちょ。それ、『あたし』が夢の中でつけてた香油の匂い」

――もしかして、たいちょも『夢』に見ちゃいました?
もしかして、あっちのあたしにめろめろにされてきちゃいましたかね、…なんて。
図星を刺されて丸くした瞳。
(つーか、匂ってる…って)
どう云うことだよ!?
わけわっかんねえなと。
ありゃあただの夢じゃねえのかよと狼狽しなかった筈もない。
――けど。
「…もしかして、あっちの『あたし』の方が良かったりします?」
若さと初々しさとにうっかりヤラレちゃいました?…なんて。
ちょっとだけ躊躇いがちに切り出されて、こみ上げた苦笑。










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あきゅろす。
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