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4.


「おーさま?」
きょとんと瞬く空色の瞳。
どうしました?って、傾げる小首。
「お昼寝始めて、まだ十分と経っていませんよ?」
くすくすと笑う松本は、それでも俺へと向けて腕を伸ばす。
その豊かな胸にぎゅうと俺を抱き寄せるから、――なんっつー懐かしい息苦しさだよ。
嘗ての苦い思い出が、否応にも思い起こされない筈もない。
(松本…ではないんだろうが、こう云うところは一緒かよ)
これが例え『夢』であろうと『妄想』だろうと、この女の根底はつくづく一緒なのだと思うと、今更抗おうとも思えずに、暫しその胸の感触に浸る。
(あー、すっげイイ匂い)
普段松本のつけている香の匂いとは明らかに違う甘い匂い。
けれど、これはこれで悪くない。
恐らく相当に上等な香料を纏っているかしてるのだろう。
それにドレスは薄くやわらかで、死覇装より余程ダイレクトに胸の弾力とやわらかさとが感じられたから。
…ついと這わせてしまった舌。
「ふぎゃっ!?」
慄きに上げた松本の声は、およそ色気からは程遠かった。
「なな…寝起きでいきなり何さらしますかっ!!」
赤い顔。
うっわ、見たことねえ初々しさだな。やべえわ、これ。
何しろ俺の良く知る松本は、既にあんなだったので。
そもそも最初に一線越えたのだって、松本の誘いがあったから。
手解きしたのも松本なら、俺はただ勧められるままに据え膳を食ったに等しい。
奔放で、あけすけ。
俺の前では女の色香を惜しみなく匂わす今の松本しか知らない俺にしてみれば、こんな初々しさを垣間見せる松本は、実に新鮮だったので。興味深々でもあったので。
色香とは程遠い、少女特有の甘い匂いに誘われるように、
「――いいか?」
気付けば口走っていた。
了承を得るその前に、とっとと長椅子へと組み敷いていた次第だった。






あー、やべえわこれ。
何となくだが今更ながらに、さっきの松本の言い分がわかったような気がしなくもない。
長椅子の上、くたりと横たわり気を失った女の顔を盗み見ながら浮かべる苦笑。
どうやら初めてでこそなかったものの(つか、これにはいろんな意味で驚きなんだが。このナリでやることやってたのかよ、こっちの『俺』も)、予想通りこの松本は殆ど男慣れしていないものと思われた。

え?
うそ、なんで?
ちょ、おーさま…やだ!
そんなところで何してんです!?

甘い嬌声と共に見せた戸惑い。
垣間見せる色濃い怯えの色に、ついつい嗜虐心が擽られてしまったではないか。
果たしてこのナリでどこまでやれるものかとの危惧はあったものの、結果、手心ひとつ加えることなく抱き潰したのは言うまでもない。









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