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4.



海岸線を臨む景色を横目に、ガタゴトと揺れる電車に身を任せる。
結局、ひと晩眠ることなく考えて。
迷いに迷った末に俺は、昨日訪れたあの店へと向かう電車に一人飛び乗っていたのだった。
目を、閉じて。
尚この脳裏に蘇るのは、あの女のことばかり。
目に焼きついて離れない、あの頃よりも尚いっそう、美しさを増した女の横顔。憂い顔。
だからと言って、会って何を話したいのかまではわからない。
話したところで。
問い詰めたところで。
それで『何か』が変わるのだとも思えない。
(それこそ今更過ぎるだろう)
ならば、話せば納得出来るのか?
あの時のことを責めるなり、問い詰めるなりして事情を聞けば、それで俺は満足出来るのか?
(否、そんな筈もないだろう)
そもそも一度は手酷く振られた相手なのだ。
棄てられて尚、こうして再び会いに向かう『理由』があるとも思えない。
過ぎ去った過去を蒸し返すだけの『必要』があるとも思えない。
――それでも、やはり…もう一度だけ。
せめてもう一度だけ会って話をしたいのだ、と。
この6年に亘るやりきれない『想い』にいい加減、終止符を打ちたいと思ったから…だから。
自然、足はあの店へと向かっていた。






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あきゅろす。
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