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3.


「たいちょの鬼!スケベ!朝から執務室で盛る隊首がどこにいますかあ!!」
ぎゃんぎゃんと喚く松本に一瞥をくれて、再び書類へと走らせた視線。
あー、茶がうめえ。
「うっせ。茶あ淹れただけで午前に休みをくれてやったんだ。文句言ってんな」
「なっ…元はと云えばたいちょのせいでしょ!」
真昼間から本気で抱き潰すとか信じらんない…って、うっせえうっせえ。
「例え夢ン中であっても、俺以外の『俺』とやったっつーてめえが悪い」
あっさりと言ってのければ松本は、途端うぐぐと口を噤む。
「…だあって、可愛かったんですもん。おーさまたいちょ」
もごもごと言い訳をする。
「悪かったな、すっかりでかく育っちまって」
「っもう、すぐ拗ねる!違いますー!今より三十センチも小さい頃の隊長だなーって思ったら、懐かしくなって…ダメって抗えなくなっちゃったんですよう!」
だってたいちょだし…って、どんな言い訳だよ。
呆れはするが、まだナリも幼い頃のガキの俺を、今もこうして慕ってくれている。
想ってくれているのは正直、面映ゆいし嬉しくもある。
だから結局は絆されてしまう。
筆を硯へと戻して、席を立つ。
長椅子に横たわる松本の傍らに寄り、くしゃりと掻き撫ぜるやわらかな金糸。
「あのなあ、例え夢ン中の『俺』が相手であっても、面白かねんだよ。…次は抗え」
ちょっと拗ねたように釘刺せば、途端綻ぶ松本の笑み。
はあいと笑った松本の額にもう一度だけくちびるを寄せて、俺は再び隊首席へと腰を下ろした。








*
*


「――つか、どこだここ」
いや、ちょっと待て。
確か執務室で飯の後、長椅子に横になったんだよな、俺。
なのになんっっでこんなところで寝てんだ、今。
「あら、おーさま。お目覚めです?」
にっこり頬笑み俺の顔を覗き込む女は松本だった。
うん、松本だ。
どっから見ても、紛うことなく松本乱菊だ。
…だが、死覇装は着ていない。
西洋風のドレスに身を包み、何故か俺を膝枕している。
(っつーか、髪も長げえし)
確か、肩口までに切ったよな?
なのに今また髪は伸びている。
腰辺りにまで伸びたやわらかな髪。
片肘を付き、上体を起こして改めた自身の身体。
どうやら俺も現世の服に着替えているようだ。
(いや、違うな)
悪い夢でも見てんだな、これ。
だって明らかに幼い身体。
…恐らく、さっき松本が語った『夢の中の俺』よか、まだ小さいような気がする。
それに良く見りゃ松本も、俺が知るより明らかに幼い顔立ちをしている。










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