[携帯モード] [URL送信]
2.


だいたいなあ、この女のどこが癒しだ?安らぎだ?
その妄想世界の俺ってのは、よっぽど女見る目がないんだろうよ。
いや、そうとしか考えられねえ。
だいたいこのヤロ、仕事はしねえしすぐサボりやがるし、酒癖は悪いし散財するしで、ほんっっとろくでもねえ副官だぞ。
そんな女が嫁で王妃…って、どう考えてもやべえだろ。
いっそ国が傾くわ!
「俺だったらぜってえてめえみてえな女、王妃なんぞにしたかあねえな」
謹んで辞退するわとぼそり嘯けば、どこからともなく枕が飛んで来やがった。
「てめ、執務室に枕持ち込むんじゃねえっつッたろが!」
「うっさい!たいちょのバカ!おたんこなすっ!そんな意地悪ばっかり言うんならあたし、おーさまたいちょのところに行っちゃうんだから!!」
「…っはあ?!何言ってんだ、てめえ!」
やべえ。
だめだこいつ、夢と妄想がごっちゃになっていやがる。
思わず頭を抱えそうになるも、目敏く気付いたらしい松本が、更にムッと機嫌を損ねるから、ああもう…っとに面倒臭せえなあ。
やいこら、やっぱ女の趣味が悪リィぞ、松本の妄想の中の俺。
こんな面倒臭せえのに安らぎ憶えるとか嘘だろ。まるっと冗談だろ。
過剰なリップサービスも大概にしろよ。
『俺』の癖してこの女の見た目に毒されてんじゃねえっつの。
「おーさまたいちょってば、ものすっごーく優しいしオトコマエのイケメンだし、あっちの『あたし』にベタ惚れなんですから!お仕事忙しいのに時間取って会いに来てくれるし、甘やかしてくれるし、夜だってあたしにめろめろだしで、すっごくすっごく可愛いんだから!素敵なんだからっ!」
隊長とは大違い!月とすっぽんですーっ!!…って、ちょっと待てコラ。
あー、いろいろツッコミてえことがあるんだが…いいか?
オトコマエのイケメンって、そもそも『俺』だろ、『俺』なんだよな?
ついでに言うなら、仕事に追われてクソ忙しいのに、積み上げられた書類の山を横目に、朝からお前のくだらん妄想に文句言いつつもこうして付き合ってやってる俺のどこが優しくないと?ええ?!
充分甘やかしてんじゃねえか。
サボりも昼寝も許容して、挙句酔って管巻くこのバカを飲み屋までわざわざ迎えに出向く、俺のどこがお前を甘やかしてねえ、と。
いったいどの口がほざくかよ、オイ。
――つーかだなあ、夜もめろめろ…ってのが聞き捨てならねえんだが。
てめえ、その妄想の『俺』とナニしてきやがった?
よもやまさか、あっさり喰われて来たってか?
(冗談じゃねえぞ!!)
「…あ、あれえ?」
途端、しまったとばかりの顔をした松本に向けてにんまりと笑う。

「そうか、今の俺はその『夢』ン中の『俺』に劣ると言いてえわけだな、お前は」
「っや、ちが…」
「幾ら妄想の『俺』とは云え、横から掻っ攫われちゃあ敵わんからな。そうまで言うんだったら昨日一日お預け喰らった分も合わせて、でろんでろんに甘やかしてめろめろに愛してやらなきゃマズイよなあ?」
「や、いい…いいですいいです!嘘ですごめんなさ……っぎゃあああああ!!!」

後じさる松本の腕を取り、詠唱破棄で一瞬にして張り巡らせた結界の中、死覇装をひん剥いたのは言うまでもない。










[*前へ][次へ#]

3/8ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!