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2.



「お前が俺の花嫁、か?」

村長さんに連れられて、祠のある森の奥へと連れて来られたあたしは、そこで豪く綺麗な男の子に会った。
(うん。どう見ても男の子)
だってちっちゃい。
すんごい小さい。
あたしよりも小さな背は、多分百四十にも満たないだろう。
…これ、神様?
でも、髪は銀色。
目は碧緑。
どこからどう見ても日本人には見えないその少年は、名を日番谷冬獅郎と言った。
生まれて間もない神様だった。
(これ、あたしの旦那様?)
神様なんているわけないじゃん。
仮にいたってどうせアレでしょ、髭のおじいちゃんとか蛇とか狐とか、そう云う『物の怪』の類でしょ。
花嫁なんて態のいいこと言ったって、昔で云うところのイケニエってヤツなんじゃないのと半ばやさぐれていたあたしは、だからほんっっとーーにびっくりした。
髪と目の色はアレだけど、どっからどう見ても人間だし。
尻尾もなければ、ケモミミもない。
だけど着ているものは――ちょっと昔風?
狩衣…だっけ?
ちょっとした時代劇にでも出てきそうな、古風な着物みたいなカッコをしている。
(暑くないのかしら)
だって夏だし。あっついし、今日。
おひさますんごい照り付けてるし。
…ああでもここは涼しいなあ。
木が生い茂っているからかしら。
季節柄、耳をつんざく蝉時雨。
――だけど今は何故かしんと静まり返っている。
まさに静謐と云う言葉が似合う。
まるで違う次元にでも来たような…?
物静かで恐ろしく厳かで静寂が漂う。
だから少しだけぞっとした。
(や、この子…もしかしてほんとに神様?)
慌てて一緒に来た筈の村長さんの方を振り仰ぐも、…あれれ?
すぐそこに居た筈の村長さんの姿は――ない。
「ええっ!?」
何で!
どうしてよ!?
そんなたしの焦りを察してか、神様であるところのその少年は、
「ここは森の神域だからな。ただの人間は長くここには留まれねえんだ」
事も無げにそう告げた。
どうやらあたしがここにこうして居られるのは、森の神域に神の花嫁として認められた存在だかららしい。
「じゃあ、行くか」
屋敷はこっちだ、と。
ひと足先に神様が、踵を返したその時のことだ。


「かみさまーっ!お嫁さん、到着しましたあー!?」


静寂溢れる森の中、突如響き渡った高らかな声。
…え?
ザッと一陣、風が吹き荒れたと思った先に、突如現れたのは。
大柄、見た目もド派手な、金髪美人の女のひとで――あろうことか神様、に。
あの子にぎゅうっと抱き着いたのだ。
(えーっ!?)











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