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4.


「いっ…た、ちょっと乱暴にしないでよね!」
「ふざけんな!つか、今すぐ解けよ、あの呪い!てめえ、本気で死にてえのか!?」
背から腰に掛け、切り裂かれたドレスと肉。
氷で止血しているために、出血こそは辛うじて止まったものの、斬り付けた際、夥しいまでの血が噴き出したのは紛うことなき事実で。
況してや腹まで刺されているのだ。
時間が経てば経つほどに、当然治癒には時間が掛かる。
最悪寿命を縮めることにもなるだろう。
なのに女はまったく意に介した様子もなく、尚も薄らと笑っている。
「別にこんな命、惜しいなんて思ってもないわ」
ばかりか、あろことか姫の血に染まるバラを尚も欲するではないか。
「お…前、そんなにしてまで姫の…桃の命が欲しいのか!?」
湧き上がるのは怒り。
苛立ち。
憤り。
こんな女を一時とは云え、慕ったことすら激情に繋がる。
そんな自分を赦せなくなる。
――何故だ。
そんな女じゃなかっただろ、あんた。
嘗て…ほんの半年余りを共にしただけの年嵩の女。
けれどそれまで俺の知る他の誰よりも、俺へとやさしくしてくれた。
叱ってくれた。
褒めてくれた。
抱き締めてくれた。
「冬獅郎、あんたいい子ね。大好きよ」
死んだばあちゃん以外で、初めて俺を好きだと言ってくれた。
生きる術と、加護とを与えてくれた。
そんな女を斬りたくはない。
殺したくない。
だからさっさと呪いを解いて欲しいのに、どうしてお前はわかってくれない。
ばかりか、尚も姫の血を望む?
ギリと奥歯を噛み締めたなら、困ったように笑った女が、そろと俺に手を伸ばす。
血を塗り込めたかのような赤い爪。
目に留め、ハッと身構えるより先に、俺の頬をぎゅむと摘まみ上げていた。
「っっい…!?」
「っもう!なあに、あんた。桃・桃って色気づいちゃってー!」
そおおんなにあのお姫様のことが大好きなのねー!って。
ちょ…待、何ニヤニヤと笑ってやがる!!
つか、ぎゅうぎゅう肉を抓るんじゃねえ!!
「てめ、離せっ!!」
パン!と手を払いのけてねめつけるも、松本の不気味なニヤけが止むことは無い。
(つーかこの女、俺に腹ぶっ刺されてんのわかってんのかよ!?)











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