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3.


「それに、その剣をあんたに譲ったげたのだってあたしなのよ?氷輪丸は元々あたしが先に屈服させてたの。そんなんで勝てるわけがないでしょが!」
バッカじゃないの?と、鼻で笑う。
ブーツのヒールで腹を思い切り踏みつけられて、僅かに呻く。
「あーあ。こんなとこまで乗り込んで来るぐらいだから、もうちょっと手強くなったかと思ってたのに」
全然ダメじゃない、あんた。
そんな呆れと諦めに、カッと頭に血が上る。
「抜かせっ!!」
魔石を宿した眼に呼応するように、身体中に満ちゆく力。
俺に背を向け、今にも遠ざかろうとする女に向けて剣を構える。覚醒を命じる。
「大紅蓮氷輪丸!!」
解放された、剣先。
辺り一面を覆い尽くす氷の華。
「なっ…!」
ハッと身構えた女目掛けて剣を振りおろす。
――そして、一閃。
背の大きく開いた漆黒のドレス。
切り裂く手ごたえから間を置かずに突き立てる。
臓腑を貫く鋒に、魔女の手から転がり落ちた灰猫は、その形を元の杖へと戻す。
拾われては堪らないと、咄嗟遠くへ蹴り付け事なきを得る。
すぐに殺すことのないように、突き立てた剣を抜くことはせず、魔石の力を以って剣と女の傷口とを凍りつかせた。
「縛道の六十一、六杖光牢」
念のためにとその身を縛道で拘束してから、改めて魔女の傍らに立つ。
見下ろす先、予想外にも魔女が抗う素振りは無い。
だが、相手は『大国の魔女』とまで呼ばれた狡猾な魔女だ。
況してやその割に俺なんぞを相手に、嫌に簡単に討ち取られた。
(何か裏があるのか?…はたまた罠か?)
そんな警戒の元、口にした。
「呪いを解け」
血染めのバラなどと趣味の悪い意向を捨てて、今すぐ姫の呪いを解けば、王命に反しても命までは取らないでやると断じる。
――だが、女は。
「んふふ。この剣、ずっと持っててくれたのねえ」
良かった、と。
ただ淡く笑うばかりだったから、ふざけるな!!と、ドレスの胸倉を掴んで激しく揺する。
衝撃に、女が痛みに顔を歪めた。










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あきゅろす。
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