[携帯モード] [URL送信]
淫猥リキッド 3



痛いぐらいに突き刺さる視線。
逃れるようにそっぽを向いて、くちびるを尖らす。
そうして消え入りそうに口にした言葉。

「日番谷に、ちょーっと癒して貰いたかっただけなのよう」
「…ハァ?!」

あたしの答えが余程思いがけなかったのか、一瞬晒した間抜け面。
それから再びぎゅうっと眉根を寄せて。
「やっぱふざけてんのか、テメエ」
ヒクと引き攣ったその口元を、あたしは敢えて見ない振りをしてやり過ごす。
てゆーか、こんなんじゃとてもじゃないけど上書きなんてして貰えそうもない。
そもそもここまで怒らせちゃったら、隠すのもいっそ面倒くさい。
だからヤケッぱちのように「わーもう、その通りよ!」と潔く認めて向き直る。
そうして、バスン!と布団を叩いた。

「酔った勢いで他の男にちゅーされて、挙句オッパイまで揉まれちゃったから、あんまり気持ち悪くてそのまま帰る気しなかったのよ!だからアンタに癒して貰いたかったってゆーか、ぶっちゃけ忘れさせて欲しかったってゆーか!…けど、悪かったわねえ、迷惑かけて!もう帰るから結界解いてよね、バイバイ!!」

掴まれた腕をブンと払い除け、そのまますっくと立って窓辺に立つも、唖然とした日番谷は結界を解く素振りもない。
それどころか呆けたままに、「…アホか」とうわ言のように呟いたから、更に頭に血が上る。
(うわもう、やっぱり来るんじゃなかった!若しくは寝起きでボケてる内にさっさと押し倒して置くんだったー!!)
更に頭にくることに、あたしの鬼道の実力じゃあ、この子の張った結界を外すことすら出来ないのだ。
普段であれば頼もしくも思えるそんなところも、こーゆー時は本当頭にくる。
(ああもう畜生、ぜったい来ない!もう二度と来ないわよ、こんなトコ!!)
ただでさえ胸糞悪い記憶の上に更に嫌な出来事までもがプラスαで上書きされて、今日は本当に最悪だ。
酔った勢いで見知らぬ男にくちびるを許したことも。
結果、日番谷でなきゃ嫌だと思ってしまったことも。
挙句、ふらふらとこんなところまで迂闊に足を運んでしまったことも、何もかも。
最悪!最悪!最悪ううううう!!!!
当分お酒も男も止めよ、止め!と、決意も新たに心の中で誓ったところで、だけど。
日番谷にぐいと袖を引かれて、気付いた時には塞がれていた。
…くちびる、を。




「んうっ…?!」

なんだ、なんだ?なんなんだ?!
今尚酔いでふわふわのあたまを抱え込まれて、引き寄せられて。
「いっ…ったあ!」
ぐうらりと体勢を崩したところを、布団の上へと転がされていたから唖然とした。

「て、ゆーか。何やってんのよ、アンタはっ!」
「見りゃわかんだろ、組み敷いてんだよ」

愕然とするあたしを他所に、フンと鼻をひとつ鳴らして、死覇装の襟に手を掛ける。
するりと袷から入り込んだ手のひらが、我が物顔で肌の上を這い回る。
「っちょ…!」
思わず抗議の声を上げかけたところで。
「…どこ、触られやがった?」
極、間近で。
剣呑にも問い掛けられて、漸くあたしは事態を悟るに至った。
(これって、もしかしなくても『上書き』態勢?)
そりゃあそうよね、だってあたし、押し倒されているんだもの。
思いっきりオッパイ触られちゃってんだもの。
(それにしたって扱いが…ちょっと乱暴すぎやしない?)
漂う空気が今尚剣呑であることを否定はしない。
寄せた日番谷の眉根には、いつも以上にくっきりはっきり皺が寄っていて、不機嫌も露ではあるのだけれど。
「…そこ。ぎゅうって強く揉まれたかも…」
おずおずと答えたあたしに苦々しさいっぱいに舌打ちをして。
「そう云うことは早く言え、阿呆!」
さっきの男の手のひらが這った感触を掻き消すように撫で上げられて、鋭利な舌先が触れた瞬間、ぞくんと肌が粟立った。







[*前へ][次へ#]

12/62ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!