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7.


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「ああ、確かにいつもより張ってんな」
確かめるように、這う手のひら。
固く荒れた指先が、捏ねるように胸の形を変えて弄ぶから、慌ててだめですと制するも、まるで聞く耳なんてもたない。
首筋に歯を立て、着物を乱す。
まろび出る乳房に喰らい付く。
跡が残るほどきつく、吸い上げられる。
いつにない強い刺激に、滲む涙。
こぼれ落ちる吐息ごとくちびるを塞がれて、いつにない無体を強いられる。
気付けば畳に組み敷かれ、裾はすっかり肌蹴てしまった。
あのひとの前に、胸乳を晒していたのだった。
「どうして…」
どうして今更こんな真似をするのだろう。
既にあたしが嫁ぐことを知っている。
お妾になる気はないことだって承知している。
ばかりか、自分だって祝言を挙げる。
それも、相手は大店のお嬢さんで、あたしなんぞより幾許も若い。
これ以上ない良縁を前に、尚もあたしを甚振ろうとする理由がまるでわからなかった。
…ああ、それに。
どうして知っているのよ、あなたが。
あたしがこれから嫁ぐことを。
呆然と見上げた先では、尚も愉快気にあのひとが笑う。
…わらう?
ううん、怒っている。
苛立っている。
だって目は笑ってなんかない。
申し訳程度に口元だけが、形ばかりの笑みを象っている。
憤っている。
腹立たしげに口にする。









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あきゅろす。
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