[携帯モード] [URL送信]
2.


*
*


「就職先、決まったから」
春からはもう、これまでみてえに面倒見てやるわけにもいかねえから、って。
報告を受けてああやっぱり…って、溜息が出たのは当然のことだと思う。
結局シロちゃんの気持ちは何ひとつとして変わらないまま。
パパやおばさま、それこそクラスの先生からも、もったいないから進学を視野に入れてもう一度、進路を考え直してみたらどうだと説得されたにも関わらずの初志貫徹。
秋を前にシロちゃんは、早々就職先を決めたのだった。
「うん、それはしょうがないよ」
だってシロちゃんは就職を決めて、あたしは春から二年余りの留学が決まっている。
そんなところまで付いてきて、なんて。
あたしに言えるわけがない。
そもそもそこまで縛り付けたくもない。
――だから別にいいんだけど。
なんだかシロちゃん、やけに生き生きして見えるって云うか、うきうきしてるってゆーか?
浮ついて見えるのってば気のせいかしら。
(しょうがねえ、って。人生投げたみたいに進路を語ってた頃と、雰囲気がなーんか違うんだよねえ)
不思議に思って傾げた小首。
その傍らでシロちゃんは、てきぱきとお茶の準備を進めている。
手際良くあたしの分の紅茶を淹れて、おやつのケーキを取り分けてくれる。
(…あれ?)
でも何故かシロちゃんは自分の分に、紅茶――ではなくお茶を用意しているではないか。
「あれ?珍しいね、シロちゃんが緑茶とか」
「そうか?つーか最近悪くねえなって思い始めてな」
「ふーん」
でもその割には、自分で淹れたお茶をひと口呷っては、何やら眉を顰めている。
「やっぱ何か違げえんだよな」
なんて、ぶちぶち文句を垂れているのだから良くわからない。
「美味しくないの?」
「いや。けど、何か…もの足んねえ」
やっぱあいつみてえには淹れらんねえな…ってぼやいたそれは、残念ながらこの時あたしの耳まで届くことはなかったのだけど。
それでもシロちゃんに『何か』があったに違いないと気付かせるには充分で。
だから『その話』を聞かされた時、ものすごーーく仰天をした。









[*前へ][次へ#]

14/15ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!