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3.


「で?待ってた…って、どのぐらい?」
「あー…。だいたい一時間ってとこか?」
おかげでめぼしい雑誌は全部読み尽くしたな、って。
ほんと迷惑な客よね、あんたも。
それでいて、店出る際に買って来たのがポカリとゴム…って。
ますます以って「はよ、帰れ!」とでも思われてそうだ。
「あーくそ、鼻炎の薬が効いてて眠みい!」
やべえ!って言いながら、肩口にがぶりとばかりに歯を立てられる。
圧し掛かられて、浮かぶ苦笑。
「あんった、一応まだ病み上がりなんだから、ちょっとは大人しくできないの?」
「出来ねえな。つか、酒臭せえしマジむかつく。よもや男と飲んで来たんじゃねえだろなあ。…つか、なんか微妙に煙草臭せえぞ」
「それはさっき言ったでしょ。一緒に飲んでた子の彼氏が吸ってた煙草の匂いー」
だとしてもムカつく…って、とことん狭量よねえ!
自分はいつだって他の女の子と一緒に居る癖に。
あたしなんかより、よっぽどその子の近くに居る癖に。
なのに、些細なことですぐ拗ねる。
剥れる。
怒る。
臍を曲げる。
そうして無体を働くのだから、なんと勝手な子どもだろう。
「あー…、早く卒業してえなあ」
そんで免許取って車買って、酔ったお前を迎えに行きてえ。
どこへだって連れてってやりてえ。
ついでに車ン中でもやってみてえ…って、最後のそれは聞かなかったことにして、縋るように手を伸ばす。
卒業まではまだ後一年近く残っていて、先のことなんてわからない。
もしかしたら七緒に愚痴を零した通り、いつかあたしを忘れて離れてゆくかもしれない。
今はこうして傍に居るけれど、他の誰かの隣りを望むかもしれない。
さよならを切り出される可能性は幾らもあって、あたしに飽きる日はそう遠くはないのかもしれない。…わからない。
――でも。

「卒業したら、早く一緒になりてえな」

あのお屋敷を出て、ここであたしと暮らしたい。結婚したい。
まるで夢物語みたいなことを言う。
こうして未来へと続く『予感』と『約束』をくれるから。
(もう少しだけ、信じたい)
信じて傍に居たいなと思うから。










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