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華を足しても枯れております 1


※お嬢様の世話係的な日番谷と松本のパラレルに付き要注意※
言葉足らずに後ろ向き、そんな一筋縄ではいかないふたりの更に後日談ネタ。





「他に大事にしてる女がいるくせに、抱くんだったらお前がいいとかぬけぬけ言っちゃう男ってばどうなのかしら」


酔いに任せて口から飛び出たあたしのぼやきを耳にして、
「そんなろくでもない男と付き合ってるんですか、またあなたは」
眉を吊り上げすぐに別れろ今すぐ別れろ、もっとご自分を大事にされたらどうなんです、と。
怒涛の如く小言を繰り出したのは、同期でもある七緒だった。
「いや、うん…ごめん」
失敗したなあと胸中臍を噛みつつ、それでも七緒があたしのことを案じてくれているのは明白なので、反論するよりも先に詫びの言葉が口を衝いて出る。
何とも云えない居た堪れなさに舐める酒。
最早親友と言っても差し支えのない、気心許せる仲だからこそ、怒らせてしまうと手に負えないのは過去のあれそれで嫌と云うほどには経験済み。
それに七緒のこの反応は、ある種想定の範囲内であり。
もし仮にこの子から、そんな男と付き合っていると打ち明けられたらあたしだって、きっと恐らくおんなじような反応を返しただろうなと思われたから、そもそも何を言い返せる筈もなかったのだ。
しょんぼり項垂れるあたしに一瞥をくれて、これ見よがしに吐き出す太い息。
…や、うん。だからごめんって。
そんな呆れた・蔑んだ、みたいな目でこっち見ないでよ。
どうにもこうにも居た堪れなさに、更に肩を縮めたところで、更なる追い打ちをかけられる。
「ほんっっとうに、どうしてそうロクでもない男にばっかり引っ掛かるんでしょうね、あなたも」
――うわあ。
それ、言っちゃダメなやつだ!
「なっ、ななおう!」
「うっさい。ほんとのことだから言ったまでです。何です、よもやまさかの不倫ですか?それとも二股男にでも、まんまと引っ掛かりましたか!?」
バッカじゃないの!?と怒り炸裂、ぐさりと唐揚げに突き立てた箸。
(やばい、ちょっと酔っ払ってる?この子)
今夜はちょっぴり飲ませ過ぎちゃったかしらと思って、脳裏に想い浮かべたのは、七緒の恋人でもある髭の部長の顔だった。
七緒ちゃん、あんまり強くないんだから、ハイペースで飲ませるような真似はしないでねって言われていたのを、すっかり忘れていたのだった。
(あー、マッズイなあ)
最悪迎えにおいで頂くより他ないかもと思って、こっそり溜息を吐く。
「や、別に不倫とかじゃあないわよー」
だってそもそもまだ十七だし。
結婚なんて出来ないし。
…ああ、でも。
「どっちかって云うと二股――に、近いのかなあ」
今度こそ、躊躇いもなく「はああ」と吐き出す深い息。
濡れたグラスの縁を指で拭う。
溶けた氷がカランと涼やかな音を立てた。










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あきゅろす。
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