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2.


そんな文句を口にするまでもなく、
「んで、お前も。ほれ、ここならいいぞ」
ここならちょうどシャツで隠れっから、と。
指し示された辺りに、無理やりのようにくちびるを当てさせられる。
「ん。吸えって」
そうして促されるまま、ちうと残した鬱血の跡。
よく出来ましたと言わんばかりににんまり笑った冬獅郎曰く、どうやらキスマークを付けられることに異論はないものの、どうにもこうにも場所が「アウトだ」と云うことだった。
「こないだのアレ、母さんにバレてマジで洒落にならんかった」
「えーっ!!」
うっそーん。
お嬢様どころか親に見られるって、それはなんとも想定外な。
うーん、確かに洒落にならないかもしれない…。
「しかも学生らしい節度ある付き合いしろって説教喰らうしうるせえし、あんま目立つとこはダメだ」
「…うん、ごめん」
これにはさすがに素直に詫びるより他はない。
しょんぼり項垂れたあたしの目に飛び込んでくる、この子が残した情交の跡。
…確かにどれも服で隠れてしまう場所ばかりであることに恐れ入る。
(でも)
「襟足。さすがにどうかと思うんだけど?」
だって、季節も季節で暑いし。
髪、縛ったり纏めたりしたら多分目立つし。
それこそ洒落にならないんじゃないかと思うんだけど。
(えー、それともこれもお仕置きの一環?わあ、ひどい!)
だけど冬獅郎は、それはいいんだの一点張りで、まるで反省の色もない。
あまつさえ、
「それは俺なりの虫除けで、最早『習慣』みたいなもんだからな。おっと、会社で髪上げんなよ」
…って、なにー!?
「え、うそ!習慣…って、もしかしていつも!?」
「おー。俺のだからな、牽制は必要だろ」
いやいや、いばって言うこっちゃない!
だ、だからか!
ここ最近、やたらと生ぬるいような目で周りから見られてたのって!
髪まとめてたら、上司がどこかもの言いたげにしてたのって!!
(うああああ!)
「あっ、あん…った」
「んー…、なんなら仕置きにもっぺん明るい中でするか?」
「しないわよっ!」
バッカじゃないのと、ぺちんとはたく肩。
けれどすぐにもその腕の中に抱き込まれてしまう。
くちびるを塞がれゆっくりと、硬い手のひらが肌を這う。
「この、跡。他の誰にも見せんなよ?」
乞われて、あたしも乞い返す。
「あんたも。他の女に見せたりしたらだめなんだから」
それに「当たり前だ」と笑って、頷いて。
――でも。
「まあ、母さんにはバレちまうかもしれねえけどな」
それは許せってまた笑うから。
あの日抱いた醜い嫉妬も、卑屈な気持ちもすっかりとどこかに消え去って。

「――バカ」

気付けばあたしも、釣られたように噴出していた。








end.


ほーら、結局バカップル(^q^)
いろいろキャラ崩壊しててすみませぬ;ところで松本さんはどんなところでお仕事してるんだろーって、考えてなかったのでふと思った次第w


お題:月にユダ

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あきゅろす。
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