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5.


「あ…たし…」
記憶にはない。
けれどあたしの身体は確かに『男』を知っている…?
思い至った結論に、サッと顔を強張らせたあたしを、けれど日番谷は怒るでなく。
況してや悲しむでなく、ただ単に。
「…涅の野郎、中途半端な記憶の改ざんしやがって」
やるならきっちり仕事しやがれ、と。
然も忌々しげに、チッと舌を打ち鳴らしただけだった。
(て、ゆーか。涅って…)
涅と云えば確か『狂魔道士』としての悪名高い、…それこそ『白き魔女』や『大国の魔女』に匹敵する、大魔法使いのひとりではなかったか?
(それに、改ざん?記憶の改ざんって、何?!)
戸惑うあたしを他所に日番谷は、腕の傷を回道を使い自ら治し、血を滴らせた敷布を剥がすと廊下に控えていたと思しき侍女に手渡してから、代わりの真新しい敷布を受け取り部屋へと戻る。
手際良くベッドを整えるのを、呆けたように眺めていた。
そうして再び促されるようにベッドの中へと引き摺り込まれて貪られる。
それこそ、日番谷が飽くまで、何度も。何度も。
まったく以ってわけがわからなかった。




何度記憶を辿っても、こんな風に日番谷に求められる理由はわからない。
思い当たるような節すらない。
(だってそもそもあたしは、生娘ですらなかったのよ)
なのに日番谷はまるで意に介した素振りもない。
否、あたしが詫びるように切り出すたびに、ほんの少しだけムッと不機嫌を露わにするのだけれど。
「…まあ、こればっかりはしょうがねえからな」
諦念混じりのそのひと言で、いつだって話を畳んでしまう。
「けど、『俺』が知る限り、お前が俺以外のヤツに肌を許したこたあねえからな」
だからいいんだ、と。
曖昧に笑う。
まるで自分自身に言い聞かせるように。
無理やりのように苛立ちを飲み込んでまた、あたしに触れる。思うぞんぶん抱き潰す。
そうして至極満足気に口元を歪める。
ニと嗤うのだ。











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