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4.


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「うん、だから別に無理しなくってもいいんだけど?」
「無理ってなんだ?つか、無理なんてしてねえぞ」

初夜の褥でそれとなく、諭したあたしに怪訝そうに眉根を寄せた日番谷は、
「――俺はもう充分待った」
「…へ?」
ぼそりと口にするが早いか、やわらかな敷布にあたしを組み敷き、奪うようにくちづけたのだった。
…てっきり形ばかりの結婚になるんじゃないかと思ってたのに。
そんなあたしの戸惑いを他所に、結果、滞りなく初夜の儀式は執り行われはしたのだけれど。
驚いたのは、そこに在るべき筈の破瓜の血が見られなかったことだった。
(どうして…?)
確かに日番谷よりは幾許も年嵩だけれども、これまであたしに他の男と懇意になった記憶はない。
だから戸惑った。困惑をした。
けれど日番谷は然して気にした素振りも見せないままに、どこからともなく小刀を取りだすと、軽く自身の腕を掻き斬り、流れ出る鮮血を敷布へと散らしたのだった。
「えっと…ひつ、がや?」
「念のため、だ」
王より爵位を賜ったとは云え、そもそも元は平民である。
根っからの貴族のように、婚姻に『処女性』を求めるつもりは毛頭ないが、…そう日番谷は前置いて。
「だが、どこにだって口さがねえやつらはいるからな。面倒なことにならねえように、念のため…だ。気にすんな」
お前は何も気に病むことはない。
そう告げる日番谷の声が、どこか遠くあたしの耳を掠める。
予め小刀を寝所に忍ばせておく用意周到さ。
まるであたしに破瓜の血が出ないことを知っていたかのような態度に口振りに、何より当惑を憶える。
(でも、どうして…?)
あたしの『記憶』を辿る限り、やはりあたしが誰かと通じた記憶は微塵もない。
無論、日番谷に触れられたのもこれが初めてだ。
確かに初めて日番谷と繋がった時、微かな痛みこそあったものの、けれど身体はすぐにも馴染んだ。
そこには初めて迎える初夜への恐れも怯えも、確かに存在しなかったのだ。










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