[携帯モード] [URL送信]
2.


その際あたしの意思など確かめられるようなこともなかったのは、恐らくそれだけ受けた衝撃が大きかったから。…なんだろうなと思って、溜息を吐く。
(まあ、断るなんて選択肢、そもそもあたしにあろう筈もないのだけれど)
だって相手は日番谷だ。
この旅の間、ずっと傍に居た。
背中をあたしに預けてくれた。
共に戦ってきた、気心知れた『仲間』なのだ。
そもそも否やなどある筈もない。
と云うよりむしろ驚きこそすれ、嬉しくない・なんてことがある筈もない。
だから別にいいんだけど。
…でも、だけど。
どうしたって納得はいかない。わからない。
(だってあんた、お姫様の騎士なんでしょう?)
お姫様に仕えていた騎士でしょう?
あのひとの為にその命を賭して、稀代の魔女を討ち取ったのよね?
…なのに、いいの?
好き、なんでしょう。お姫様のことが。
(だって、あの子のこと、大事だ…って。あたしに言ったじゃない)
好きなんでしょ?って聞いたあたしの言葉に、否定することもなかったじゃない。
だから戸惑った。困惑をした。
なのに日番谷は未だ驚くあたしの手を取ると、
「なあ、俺のもんになってくれるか?」
永劫俺の傍に居てくれないか、と。
朴訥とした声で。
固い口調で。
揺れる、どこか寂しげな眼差しで。
あたしに結婚を乞うて来たものだから。
…ああ。
そもそもが、断れる筈もなかったのだ。
だけどやっぱり納得はいかない。
(だってあんた、あたしのことなんてその目に映してないじゃない)
あたしを見ているようで見ていない、魔石を宿した翡翠の瞳。
あたしを通して、どこか遠くを…別の『誰か』を見ている?
気付いて、思い当たるひとと云ったら唯ひとり。
(なあんだ。やっぱりあんた、あのお姫様のことが好きなんじゃない)










[*前へ][次へ#]

3/25ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!