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8.


「え?京楽隊長が、たいちょに連絡入れて迎えに来てくれたんじゃあなかったんです?」
「違げえ」
その前にとっくに迎えに出てた、と。
だからあいつは関係ねえ、と。
あたしの目も見ず言ったあと。
しかめっ面を更に顰めて、ぐとくちびるを真一文字に結ぶ。
夜目にも薄っすらと赤い眦と頬。
酷く照れ臭そうに口にした。
「誰に頼まれたわけでもねえ。迎えに来たんだよ、気になったから!」
頃合い見計らって来たに決まってんだろ!と、がなるが早いか舌を打つ。
「それまで誰と居たわけでもねえ。――から、行くぞ!」
そうしてぷいとそっぽを向くと、改めてあたしの手を握り直して、腕を引く。
その際、一本一本指を絡め取られていることに、気付いて慌てなかった筈も無い。
「った…たあいちょ!?」
「うっせ、うっせ!いいから帰んぞ!!」
ぐんぐんとあたしを引っ張って、ずんずんあたしの前を行く。
ちらと振り向いてもくれないけれど、指はしっかりと繋がれたまま。
前を行く隊長の耳が、赤く染まっているのが僅かに見えて、更にかあっと頬が熱を持つ。
やっぱり好きだなと改めておもう。
きゅうんと胸が締め付けられるから。
「ったあいちょ!」
もう片方の手をめいっぱい伸ばして、その小さな背中にぎゅうと抱き着く。
「う、お!?」
バランスを崩した隊長が、途端ドン!とあたしの胸の中へと倒れ込んで来て、距離が縮まる。ゼロになる。
「うう…たいちょ、大好きっ!!」
ぎゅうと抱き締めた勢い余って口にしたなら、――腕の中。
あたしの胸の谷間に半ば埋もれながら隊長が、「…なんだ。いつも通りじゃねえか」と。
どこか安堵したように、苦い笑いを口元に浮かべる。
ホッと小さく息を吐くから。
もしかしたらこの隊長は、やっぱりデフォルトの隊長なんかじゃなくて、無駄にあたしに甘い、この『世界』の隊長なのかもしれない。
はたまたツンデレ?
若しくはクーデレ??
輪を掛けて意地悪な隊長なのかもしれないし、ただ単に…本当に。
あたしを案じて迎えに来てくれた、そんな隊長なのかもしれない。…わからない。
だけどどんな隊長であれ、やっぱりあたしはこのひとのことが好きなので。
そう云う風に出来ているのだと、思い知らされるだけなので。
(別に誰が『主役』でも関係ないわ)











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