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7.


「あ。もしかして、今すっごい機嫌が悪いのってば、誰かと一緒に居たからですか?わあ、だったら別にスルーしてくれちゃっても良かったのに!別にあたしひとりでも充分帰って来れましたよー」
ああ、そうか。
だからこのひとこんなに不機嫌なんだ!
だってこんな真夜中に、未だ羽織姿でいるぐらいだもの。
きっと仕事が終わった後、誰かと会っていたに違いないのだ。
(そもそも京楽隊長に呼び出されてから店に来たにしては、やけに着くのが早過ぎるなあと不思議に思っていたのよねえ)
だってあたしと七緒が飲んでたのってば、五番隊近くのお店だし。
十番隊の隊舎から来たにしては、幾ら何でも早過ぎる。
(となるとやっぱり相手は雛森かあ…)
あー、そりゃあ確かに機嫌も悪くなる筈よねえ。
ツンも発動するわけだわ。
邪魔されたー!ぐらいのこと思っていたって不思議はないわと思って、うぬうと唸る。暫し思いを巡らせる。
こうしてお迎えに来てもらったところで、どうせ後は隊舎に帰るだけだもの。
言うほど距離があるでなし。
そもそも今のあたしは酔ってだってない。
たいちょの心は此処にない。
――だから。
「あたし、やっぱりひとりで帰りますね」
繋がれた手をパッと離した。
振り解いて、ひとり立ち止まった。

「元々そんなに酔ってたわけじゃないですし、たいちょは元居たところに戻って下さい」
「てめ…」
「ああ、あと京楽隊長にもあたしから文句言っときますね。幾ら自分が七緒のことで手いっぱいだからって、たいちょのこと、あんまり夜更けに呼び出してくれるな!ってね」
「なっ…!」
「やー、あたしも図々しく甘え過ぎちゃいましたね、ごめんなさい。今度色付けて奢りますから。それじゃあ、ここで」
「…って、待て松本!」

ぺこりと頭を下げたところで、再びぎゅうと掴まれていた。
振り解いた筈の手を。
それも、酷く苛立たしげな顔で以って。
苦々しさを隠さない面持ちで、痛いぐらいに掴まれた腕。
「…たいちょ?」
こてりん、と。
小首を傾げて問うたなら、どこか困ったような顔をして。
それからついと逸らされてしまった視線。
けれどやっぱり掴んだ手は離してもらえないまま。
たいちょ、痛いです…と文句を言えば、尚いっそうのこと顰められた眉。
そうしてぼそりと口にした。
聞き取れるか聞き取れないかと云った、ひっくい声で。

「京楽は関係ねえ」

それも、酷く不貞腐れたような声だったから、きょとんと思わず瞬いた瞳。











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