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3.


微妙な距離。
微妙な歩幅。

置いて行かれることはないけれど、さりとて近付くこともない。
(たいちょが好きで好きで堪らない、いつものあたしであれば距離を縮めることぐらい簡単だけど)
たーいちょ!って、甘えてその背に駆け寄って、ぎゅむと抱き着いてしまえばこのぐらいの距離、あっと云う間にゼロになるのに。
――でも。
(今のあたしは『主役』じゃないから)
そんな風に甘えてしまえばきっと、「松本おーーっ!!」って怒鳴り散らされる。
抱き着いた腕を振り払われるのが関の山。
目に見えているからそんな迂闊な真似は出来ない。
てゆーか、恐くて出来そうもない。
(大概あたしもヘタレよねー)
この世界があたしとたいちょを中心に回っているとわかっているから、ああも無茶だって出来たし、好きに振舞えた。
…だって行きつく先は結局は、いつも一緒なんだもの。
最後には必ずあたしに向けて差し伸べられる隊長の腕。
あたしはその手を取るだけでいい。
そんな未来が見えているから、本気で尻込みなんてすることはなかった。
だけど今この『ルート』では、どうやらあたしとこのひとは、完全『脇役』扱いのようだから。
だからどう接していいのかを、考えあぐねてしまっている。
…もしかしたら、この隊長は雛森だったりやちるだったり、はたまたあたしが名前も知らない他の女の子を想っているのかもしれないんだもの。
なまじっかこれまで好き勝手やって来てばかりいたものだから、まるで勝手がわからないでいる。
おかげで文句のひとつも、甘えのふたつも、それこそ我がままだって言えやしない。
――白い息。
吐き出す夜空は月も星もとても綺麗で、澄んだ空気をしている。
「…たいちょみたい」
きらめく星も。
大きな月も。
みんなみんな、近いようでいて、酷く…遠い。
手を伸ばすことが、思わず躊躇われるぐらいには。
どうにも無駄な足掻きのような気がして、溜息が出る。











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あきゅろす。
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