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6.


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*


「お。やーっとお目覚めかい、七緒ちゃん」
腹の立つほど暢気なその声に、意図せずムッと眉間に皺が寄る。
「何故、隊長がこちらに?」
「やだなあ。それも憶えていないのかい?乱菊ちゃんがね、珍しく焦って僕のところに連絡寄越して、『七緒が潰れちゃいました〜!』って泣いて謝るじゃない。てっきり冗談かと思って迎えに来たら、ほんとに卓に突っ伏して倒れてるじゃない。びっくりして、ついうっかり僕の方までその場に卒倒しかけちゃったよ」
何か嫌なことでもあったのかい?…なんて。
探りを入れられたところで、答えられる筈もない。
「あの、それで乱菊さんは?」
「ん?ああ、あっちはあっちで今頃お迎えが行ってる筈だよー」
きょろと辺りを見渡す限り、さっきまで飲んでいた店から然程離れていない区画であることに気がついて、そうですかと息を吐く。
「幾ら役得だからって、さすがに僕も七緒ちゃんと乱菊ちゃんと、酔っ払い二人の面倒までは見れないからねえ」
日番谷くんにお出で願ったところさ、と。
陽気に笑う男の肩からは、酒精に混じって微かに脂粉の香が漂う。
――尤も、今更それを咎めるつもりも起きないけれど。
(どうせまたいつものように、どこぞの女のところで飲んでいたんでしょう)
お楽しみのところを邪魔されて、まったく以っていい気味だわとこっそり舌を出す。
なのにちっとも心は晴れないのだから面白くない。
「七緒ちゃーん、何か怒ってる?」
「っ!いいえ、少し…飲み過ぎて頭が痛いだけです」
「ああ。今日はまた随分と飲んでたみたいだからねえ」
まあ、僕としては役得だけど、なんて。
わざとらしくも鼻歌を歌う。
途中、よいしょと私を負ぶい直す。
大丈夫です、歩けますから。
下ろして下さい、なんて言葉は今日に限って出て来ない。
代わりに、羽織の上へと羽織った女物の着物を強く握りしめてまったのは、やるせなさゆえ…だったのだろうか。
今こうしてここで過ごす時間も、あのお二人をお膳立てする為だけに用意されたものだと思えば、どうしたってやりきれないような感傷に駆られてしまうから。
「んん?今日の七緒ちゃんはまた一段と甘えただねえ」
「うるっさい!だいたい甘えているんじゃあありません、まだ少し気分が優れないだけです!!」
「あらら、そりゃ大変だ」
ごめんよ〜と苦笑混じりに謝って、見なかったことにしてくれる。
気付かぬ振りをしてくれる。
…だから、そっと目を閉じて。
その広い背中に身体を預ける。
息を吐く。
(バカみたい)
本当にバカみたい。
こんなだらしない男を慕うなんて。
(本当に、何て面倒臭いんでしょう)
乱菊さんの言うような、私と京楽の間にあると云う『確固たる絆』なんてものは、残念ながら当の本人である私には見えない。
生憎、一片たりとも感じられない。
羨まれたところで納得なんて出来っこない。
…だから私も同じですよ。
一緒なんですよ、乱菊さん。
所詮、『隣の芝生』はやっぱり私も青く見えるんですから…。


(だから、そんなに寂しそうな目で、あんまり私を羨まないで下さいね)






end.


珍しく七緒ちゃん視点を書いたと思ったら、またわけのわからないものを…orz
ええっと、読んで字の如く『二次創作世界の松本と日番谷を取り巻く面々のお話』です。二次創作世界を行き来する松本さんですよ、八番隊ネタと思われた方はすみません><;
日乱妄想しながら何となく、二次創作世界であれこれやってる松本、松本も大変だよな…ってふと思って書き上げただけの駄文です。ある意味パラレル?
後、最近の本誌展開的に今書いとかないとどう転ぶかわっかんないなー。八番隊ネタで矛盾生まれそうだなーって思ってガーッて殴り書き。近々松本視点も書き上げたい所存(w;


お題:エナメル

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