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5.


「それに、乱菊さん。京楽のあれは単に私を庇っているのではなく、根底に前副隊長だった矢胴丸さんをむざむざ失うことになった贖罪から来ているんです。自分の判断ミスで大事な部下が死神を辞する羽目に陥ったと、今も堪えている節がありますからね。…私には単に同じ轍を踏ませたくないと云うだけのことです」

頑として言い切ってからクイと傾けた杯に、乱菊さんが少し戸惑う。
「な、七緒う?」
何と声を掛けたものかと困惑しているのを敢えて無視して、「ああ、それから」と尚も紡ぐ。
「京楽にすれば私の存在なんてもの、取るに足らない小娘でしかありませんから。京楽には、もっと深い…深いところで繋がっている、生死を共にすると誓った相手がいるようですから」
「っはああああ!?」
「ああ、誤解しないで下さいね?斬魄刀ですよ、斬魄刀。で・す・が、もう。それはもう、深ーい絆で繋がっているようですから」
「っな…なあんだ、斬魄刀?それならしょうがないんじゃない?うちの隊長だって仲いいわよう、氷輪丸と」
「そうですか。ですが、生憎花天狂骨はヒト形をした女性だそうです」
「……あ、うそ。マジ、で?」
「ええ。そんなわけで、表面上は確かに大事にされてはいますが、所詮は二番・三番目の女です。書類捌くしか脳の無い、庇護されてるだけの副官です」
「ちょ、七緒お!!」
待って!誰もそこまで言って無いから!!と青ざめる乱菊さんの制止の声を振り切って、尚もどぼどぼと酒を注ぐ。
杯をガッと掴んで、カッと呷る。
勢い良く、タン!とテーブルに叩き付ける。
「だいたいこの『世界』に於いてだって、そりゃあ…乱菊さん達お二人のサポート的立ち位置には居ますけれども。パッと見、安定してそうに見えているのかもしれませんけども!『京楽』ときたら色街に入り浸りだわ女遊びはするわ、日番谷隊長を悪い遊びに誘う設定だわで、ほんとにほんとに…ほんっっとーーーに!!腹が立つったらありゃしない!!貴方、どれだけ女がいるんです?!それでいて日中私に甘えて仕事サボるとかすぐ逃げるとか、どれだけバカにしてるんですか、私のこと!?って、あの胸毛をぜんっっぶ毟り取ってやりたいぐらいなんですからね!!その点日番谷隊長なんて、基本乱菊さん一筋で、仕事も真面目で堅物で…。一途で誠実、いいじゃないですか!私からしたら羨ましい限りですよ!!」
「なっ…七緒う!!」
ちょ、わかったから少し落ち着きなさいってば、あんた!!と。
血相を変えた乱菊さんが、私の手から空の杯を取り上げたところでぱったりと、意識が途切れたことは憶えている。…辛うじて。
本当に。悪い酒とは良く言ったものだと感心したのは他でもない。
ゆらゆらと揺れる広い背中に負ぶわれている、と。
気付いて程なくのことだった。
…嗚呼。









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