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4.


…まあ、確かにそれらしい一面が無かったなんて言わないですけどね?
ええ、確かに大事にはされているんでしょうね、京楽に。
目の届く傍に置いて、危険な目には遭わせたくない。
失いたくない存在だと思われてはいるのでしょう。
それこそ日番谷隊長が、幼なじみでもある雛森さんを護りたいと思う気持ちに酷似した、そんな決意を感じないとは言いません。
――です、が。
隊首と副官である以上、そんな関係は本末転倒。
副官である私からすれば、その存在を軽んじられているだけとしか思えないのだ。
護って貰おうなんてことは望んでもないし、むしろ迷惑でしかない。
屈辱でしかないことを、きっと知らないのでしょうね。あの男は。
否、本当は知っているのかもしれない。
知ってて尚私を戦闘からは遠ざけたい、などと。
ふざけたことを言っているのだとしたら、これ以上の侮辱は無い。
私の副官としての矜持はズタボロだ。
(私だって、乱菊さん達のように背を預けられる存在でありたいと願うのに…)
そんな価値すらないのかと思ってしまう。
きっとそんなことを明かしてしまえば、乱菊さんのことだもの。
「何言ってんのよ、それだけ大事にされてるってことじゃない!」
とでも、呆れられてしまうかもしれない。
または笑い飛ばされるに違いない。
若しくは今し方のように、「羨ましい!」と、拗ねられてしまうだろうか。
胸の奥に凝り固まる、そんな澱みには見ない振りをして。
「迷惑なだけですから」
端的に言って舌を湿らす。
お酒に逃げているのは、…なんだ。結局私も一緒じゃないかと溜息を零す。
そんな私を一瞬、ぱちくりと。
目を瞬かせながら見やった乱菊さんは、けれどすぐにも気を取り直したように、そおねと呟く。
「それもそうなのよねー。いいな・なんて言ってはみたけどさ、何もあたしも別にあのひとに、雛森みたいに守られたいってわけじゃあないのよねー。それは、ね。そーゆーのとは違うのよ、うん。むしろあたしが護りたいわけだし?てゆか、そんなことたいちょが言い出しちゃった日にはそもそもからしてキャラ崩壊?そんなたいちょをあたしは好きになんてなれないもの」
うん、わかってんのよねーと低く唸りながら、頬杖を付く。
「思わせぶりでも何でも、背中…護らせてくれるし、お傍に置いてくれるし。信頼だってしてくれてるし。それで充分じゃない!って話なのよねー」
やっぱりあたし、ぜーたくなのかな?我がままかなあ?
ねえ、どう思う?七緒う…と。
またべそべそと泣き付く乱菊さんはこんな時、やっぱり『彼女らしい』と思って浮かぶ苦笑。
本来護るべき上司に背中を預けて貰えない、現状護られる立場にある私が、そのことについて少なからず不満を抱いていることを、ちゃんと知っている。汲んでくれる。
そんな心細やかなこの人のことが、何だかんだと呆れても、結局私は大好きなのだとしみじみ思う。
…だからと云うべきではないけれど。
今夜ばかりは少しぐらい、私も乱菊さんを見習って、弱音を見せてもいいんじゃないかしら?
そうしたら、きっとご自分が如何ほど恵まれているのかを、嫌でも思い知るのではないかしら?
『隣の芝生』だからこそ、単に青く見えるだけなのだ、と。
わかるようにと、少しばかり酩酊した頭で切り出した。










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