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3.


――つまりどう云うことかと云えば、日番谷隊長と結ばれることに異存は無い。
と云うより、大変喜ばしくも嬉しいことではあるようなのだけど…。
例えば、報われない片想いから始まるとか。仮に付き合っていてもその心が誰に向いているのか良くわからない、とか。
端から『当て馬』とわかる異性と自分が付き合っていたり、はたまた日番谷隊長がそんな異性とお付き合いをしていたり。
若しくは他の女性に片想いしていたりなどと、結ばれるまでの過程に思い悩むことが余りに多過ぎて、どうにも辛いと言うのだ、乱菊さんは。
(まあ、わからないでもないですけれど)
何しろこの『世界』は複雑で、日番谷隊長と乱菊さんを中心に、幾重にも『道』が広がっている。
その枝葉のように分かれた道を、このお二人は幾つも巡って辿っていかなくてはならない『定め』を背負っているのだ。
行きつく先は常にひとつ、目指す最終地点はたったひとつしか無いと云うのに、その道ゆきにはさまざまな障害、困難、苦難の数々が待ち受けているのだから、常に身体を張って立ち向かうしかない乱菊さんとしては、堪ったものではないのだろう。
だからいい加減乱菊さんが、こうも拗ねてしまう気持ちは良くわかる。
否、わかり過ぎてしまうぐらいだ。
「その点七緒のところはアレでしょ、何て云うか…いわゆる『主人公の友達ポジションにいる安定カップル』って感じじゃない?基本固定だし揺るぎないし、そもそも『大元』からして優遇されているじゃない?ある意味公認、公式でガチじゃない?!…わあもう、ズルイズルイ!あたしもそっち側が良かったー!!」
わーん!と、大声を上げて再びテーブルに突っ伏した乱菊さんは、云わばこの『世界』に於いては『主人公』と呼ばれる存在だった。
この世界で数多の恋物語を演じる。
但し、恋のお相手は日番谷隊長ただ一人。
繰り返し繰り返し、何度でも。
例え一度は二人が結ばれたその後までも…。
それこそ幾重にも亘って、違う『恋の話』を二人で綴るのだ。
尤も、恋の話と言っても当然千差万別。
ただひたすら甘いだけの話もあれば、時に酷く傷つけ合うようなこともある。
片一方だけが酷く傷付けられることだってある。
酷い時にはどちらかが、死に至るようなこともあると云う。
それが乱菊さんには酷く耐え難いようなのだ。
「そりゃあね、楽しくないって言ったらさすがに嘘になるわよ?だって小っちゃな隊長から、ちょーっと大きく育った隊長、それからあたしを見下ろして余りある、うんと大人な隊長。それだけじゃなくて、現世のいろんな時代のいろんな世代の隊長と、それこそいろんな物語をふたりで綴っていけるんだもの。途中すったもんだあったとしても、最終的にはあたしを選んでくれるんだもの。――でも、ね。時々あんまり波乱万丈過ぎて、ぼっきぼきに心折れそうになっちゃうの!あたし、いったい何をやっているんだろう…って、心折れ過ぎて役目放棄したくもなっちゃうのよう!」
えぐえぐと泣きながら管を巻く。
だけどお酒を呷ることを忘れないのは、何と云うか…まあ、彼女らしい。
「そもそもあたしとたいちょの関係って、すっごい曖昧って云うか、上司と部下ってこと以外、確固たるものがないわけじゃない?その点あんたのとこは何かもう夫婦?って扱いでしょ。だいたい一番隊に異動するのにあの四十六室相手にあんたの同伴ゴリ押しするとか、ちょー愛じゃない!わあ、羨ましいっ!!その点、たいちょなんて雛森雛森で、たまーーに思わせぶりな態度見せてくれるだけなんだもん!」
不公平ーーっ!!って、嗚呼。うるさい、うるさいっ!!










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