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終わりになんてしたくない…って言ってたもんね。
さりとて拗らせ過ぎた長い初恋を、燻ぶらせたまま忘れることも出来ないんでしょ。
カノジョのことをすっぱり諦めて、あたしに乗り換えることだって出来ないんでしょ。
…だからもう、いいや。
うん、それでいいよ。
しょうがないから、あたしが代わりに忘れてあげる。
それで傍に居てあげる。
それこそあたしの気が済むまで。
若しくはあんたがあたしを必要としなくなるその時まで。
こうなったらとことん傍に居てやろうじゃないのよ。
飽きるまで纏わりついててやるんだからっ!
他にもっともーっとイイ男が現れるまで、あたしだって利用してやるんだからね、あんたのこと!
…但し、もう二度と。
大好き、なんて絶対言わない。
そんな言葉だって期待もしない。
(だってこれ以上傷付くのなんて…イヤ)
そもそも困らせるのをわかってて、大好き!なんて口にするのだってイヤだしねー。
他に本命がいる以上、好きなんて言葉言って貰えるわけがないんだから、期待するだけ無駄だもの。
…いいわよいいわよ、だからもうちょっとだけ、あんたに都合いい女でいてあげるわよ。
そう思って、閉じた瞳。
日番谷の手が、そっと頬に触れたから。
だから目を閉じて、落ちてくる筈のくちびるを待った。
程なく押し当てられたくちびるを受け留めて、あたしも日番谷の首裏に両腕を回す。
尤も、さすがに昨日の今日でこれ以上はカンベン!て、笑って釘を刺したら、幾らなんでもそこまで飢えてねえよと至極嫌そうに言い返されもしたのだけれど。


「…けど。キスぐらいなら別にいいだろ」


拗ねたみたいな顔をして、そんな可愛いことを言うものだから。
キュンとときめいてしまった胸。
嬉しくなって、もちろん!とばかりに飛び込んでしまった日番谷の腕の中。
ぎゅうと背中を抱き返されて、緩む頬。
あの子のくちびるに、舌に翻弄されながら、やっぱり好きだなと思ったから。
今はまだ、このぬくもりを失いたくないと思ったから。
…日番谷、だいすき!
ともすれば口を衝いて出てしまいそうになる言葉を無理やりのように飲み込んで。
改めてあたしは暫しの間の『現状維持』を心に誓ったのだった。










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あきゅろす。
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