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6.


それじゃ幾ら待っても「好き」なんて言葉、言って貰えるわけもないっか。
逆にあたしに好き好き言われたところで、そりゃあ困りもするわよねえ。
(だってあたしのことなんて、好きでもなんでもないんだもの)
むしろ、職場でコンビ組んでるだけの先輩なんぞとやけくそ紛いに一線越えたってことで後悔しててもおかしくないし?
しかもまだその片想いの彼女のこと、すっごい引き摺ってるみたいだし、ああ云う反応したって不思議はないのかも…。
それにこれって日番谷が嫌った、フラレた弱みに付け込んだのも同然じゃない?
となればきっと、いい気はなしない。
あたしなんかの誘いに乗って、うっかりなびいちゃった日番谷的には複雑なんじゃなかろうかとか思っちゃうのだ。
うわ、複雑だな〜と思いながらもグラスを煽ったところで、虚ろな目をした日番谷が、グラリと大きく揺れて傾いて、「あ」と思う間もなくばたりと前に倒れ込む。
(あらら、さすがに飲ませ過ぎちゃったかしら?)
見ればテーブルの下、お酒がひと瓶空になっている。
…うん、下戸の割にはよく飲んだわね、日番谷あんた。
さすがに酔いが回ったのか、ガラステーブルに突っ伏すようにして意識を失い、すよすよと軽い寝息を立て始めた日番谷の旋毛を見下ろしながら、吐き出す溜息。
「ん・もう!あんたも、そーゆーことならもっと早く言いなさいよねっ!」
そしたらあの、一回限りで終わらせたのに。
あたしだって伊達に場数踏んでるんじゃないんだからね、ちゃあんと空気ぐらい読むわよ、そしたらさすがに。
「ごめんごめん、酔った勢いでやっちゃった!」
「いやー、夕べの記憶全然ないわー。やっばいわー」
ぐらいのこと言って、酒の上での過ちで済ませることだって出来たのに。
ちょっぴり心惹かれつつあったことも隠して、全部綺麗に葬り去って、今まで通りに振舞うことも出来たのに。
ちょっとお茶目な職場の先輩・って立ち位置に、笑って徹することも出来たのに。
…なのにこんな三ヶ月も経って、何度も肌を重ねて今更他に好きな子が居るなんて言われたところで、あたしにどーーしろって言うのよあんたは。
ああもう、ムカつく。腹が立つ。
苛立ち紛れにビシッ!と旋毛を指で弾いてやったなら、ううう…と日番谷が小さく呻く。身じろぎをする。
(あらやだ、起こしちゃったかしら?)
でもまあ、ちょうどいいのかも。
何しろ『事情』が明るみになった今、幾らなんでもこの先もこのまま…ってわけにはいかないものね。
そりゃ、日番谷のことは今以ってイイなと思ってはいるけれど、他に好きな女がいる男なんぞとこれ以上、だらだら付き合うつもりはない。
(そんな惨めな恋愛、頼まれたって御免だっつーの!)
いやでも良く考えたらあたし、日番谷に「好き」とも言われてなかったんだっけ?
付き合ってるのかも不明でしたね、そうでした。…ギャッフン!
だから今日こうして白黒はっきり付けてやろうと思ったんだったわ。あらやだ、すっかり忘れてたけど。
…てことは、何だ?セフレですか?
今のあたしってば、都合いい女?
(いや、同じ職場でコンビ組んでる相手で、しかもあたし一応先輩だしで、とてもじゃないけど「都合いい」とも言えない女なんですけどもっ!)









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