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5.


さすがにね、これにはあたしも「バッカよねえ」って思わず呆れちゃったわよ。
ああもう、なんっでそこで強引に行っとかなかったかなあ!
そりゃあ彼氏が居た時は諦めるより他なかったのかもしれないけれど、別れた後でしょ?振られちゃった後なんでしょ?
なら、今度こそダメ元で告白するとか、キスのひとつもかましてみるとか、ちょーっと強引に迫ってたらきっと、今頃日番谷の運命も大きく変わっていたんじゃないかと思うのよねえ。
そうぼやいてやったら日番谷のやつ、しょうがねえだろ…って。
そんな弱みに付け込んで、好きでもないのに付き合って貰ったところで嬉しくなんてねえんだから。
どうせだったら俺のこと、本当に本気で好きになって貰いたいって思ったんだよ、…なんて。
ちゃんと俺のこと好きになって、付き合って欲しかったんだ、…なんて。
柄にもなく青臭いこと言うんだもん。
…でも、ね?
思っちゃったのよ、あ・それわかる!って。
だってあたしも昔から、こんな派手めな顔立ち、胸ばっかり育った身体だったから。
おまけに性格はこんないい加減だしで、とかく誤解されることが多くって、すっごい嫌だなと思ってたから。
誰とでも遊べる、誰とでも寝れる、――そんな女じゃないのに。
見掛けがエロそうだからってだけで、そーゆータイプの女と思って声を掛けられる。
又は周囲から遠巻きにされる。
どうせさんざ男食って遊んでるんだろうし、何言ったって気にしない、何したっていい女だろうと決めて掛かって蔑まれる。
そんな顔と身体だけしか見てないような、見掛けだけで判断するような男ばっかり周りにいたから、そんなんじゃなくて。
ちゃんと『あたし』を好きになって欲しい。
あたし自身を、中身をちゃんと見てくれる、理解してくれるひととお付き合いしたい!って、これまで何度思ったかもわからない。
それゆえ、日番谷の気持ちも何となくだけどわかるのだ。
ああ、根底は一緒なんだなあと思ってしまった。…だから。
それ以上何も言えなくなってしまったのだった。
ただ、よしよしと。
そのやわらかな銀糸を撫でることしか出来なかったのだ。
そうして尚も続く、日番谷の過去の思い出話とカノジョの記憶。
例え彼女に新たな彼氏が出来ても、細々とした繋がりだけはずっと続いていたものの、どうにもこうにも決定的にすれ違い過ぎてて、日番谷の想いはちっとも彼女に伝わらない。
そもそも打ち明ける機会すらも訪れないまま、早七年余りの月日が過ぎたと云うから驚きである。
そしてとうとう三ヶ月前。
即ちあたしと日番谷が致してしまったその直前に、意中の彼女にまた彼が出来た。
それも今度は、高校時代の元彼と元サヤ。
しかも結婚を前提にお付き合いを始めたらしいと聞いて、さしもの日番谷も諦めざるを得ないと心折れたらしかったのだ。
(あー、つまりそこをタイミング良くあたしが誘っちゃったってわけね)
つまりあれは、やけっぱちで応じたってことかと思って、胸中ガックリ項垂れなかった筈もない。
そーかそーか、だからあんたあの時一瞬あたしの誘いに躊躇ったのね。
それでもいい加減日番谷も限界だったから、結局はあたしの誘いにまんまと乗っかったって云うわけですか。
二十二年越しの童貞も捨てて、その後も誘われるままあたしと関係を持って。
だけど結局未だ諦めは付かず、その彼女のことを想い続けている。忘れられずにいる。
それだけ本気でその子のことが好きなのね、あんた。








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あきゅろす。
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