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4.


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――関係を持つようになって、三ヶ月。
決定的な言葉はなくとも付き合ってるに違いないって思い込んで、幾分能天気に構えていたあたしだけれど。
さすがにここに至るまでそれらしい言葉を何にも言ってくれない日番谷相手に、思うところだってちょっぴりあって。
正直ちょっと焦れてもいたし、いい加減ホントのところを聞きたいなあとも思ったから、「宅飲みするわよ!」って勢い込んで、その日は日番谷を部屋に連れ込んだ。
それもちょっぴり奮発をして、日番谷でも軽くイケそうなお酒を幾つか用意して。
しこたま飲ませて、ここぞとばかりに本音を聞き出してやろうと企んでいた結果が即ちコレと云うわけである。
(よもや高校の時からずーっと片想いをしてる子がいるとか、さすがにそれは想定外だわー)
べろんべろんに酔っ払った日番谷曰く、相手は1コ年上の部活の先輩。
先輩なのに、全然そんな感じじゃなくて。
なんか動きもちまちましてて可愛いし、俺みたいに愛想も悪けりゃ目付きも悪い、コミュ障気味にも愛想良くって臆せず話しかけてくれて、しかもすっげー親切。
やさしいんだよ。好きだったんだよ。
てゆーか、ぶっちゃけ今もすっげー好きだ、って。
うあー、そゆこと言っちゃう?今、ここで。
さんざ期待持たせた、あたしの前で言っちゃうかああああ!
いやまあ、勝手に期待してたのってあたしなんだけど。
別に好き…とか言われてないし?付き合おうとも言われてないし。
だから今ここでこうしてお酒を飲ませて、本音を吐かせているわけだけど。
それにしたってこれは、想定の範囲外も範囲外ではなかろうか。
いや〜衝撃受け過ぎて、正直さっきから言葉もないわー。
そんな日番谷の長年の片思いのお相手だけど、生憎当時の彼女には高一の時から付き合っていると云う彼氏がちゃんといて、それゆえ高校時代の日番谷は、彼女の良き後輩でいるより他なかったんだそうだ。
「えー、別に遠慮なんてしないで告っちゃえば良かったじゃない。案外あっさりあんたに振り向いてくれたかもしれないわよー?」
なんて今更なことを言ってみるも、日番谷はムッと眉間に皺を寄せただけ。
「…できるかよ、そんなこと」
だってすっげーそいつのこと、好きでしょうがないって顔してたんだぞ。
すっげー幸せそうだったんだぞ。
だから俺なんかが告白したって困らせるだけだ…って、わああああ耳が痛い!
だからもうそれ以上何も言えなくなってしまったあたしは、尚も続きを促すよりも他はなく。
酔えぬお酒を片手に、大人しく聞き役に徹することにしたのだった。
さて、そんな彼女もいよいよ高校を卒業して、地元の短大へと進む。
尤も進学先が地元だったことが幸いして、細々とだけどその後も暫く交流はあったと云うことだった。
ま、だから余計に諦め切れなかったんだろうなと思ってその点同情はした。
だけど高校卒業から程無く、彼女は件の彼氏と別れてしまったようで…。
うん、あたし的にはすっごいチャンス到来じゃない!?って感じだったんだけど、そんな初めての失恋に憔悴しきった彼女の傷心に付け込むなんて芸当は、当時の日番谷に出来ようもなく。
結局メールや電話で慰めたり、時に様子を窺うようにして見守ったりと手をこまねいていたその隙に、ポッと出の別の男にまんまと横から掻っ攫われてしまったらしい。
あーあー。









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あきゅろす。
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