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3.


…初めて。
そっか、この子ってば初めてなんだ。
だから加減もわかんないのね。
そんな目立つところに痕付けて、どうするつもりよ。どうしてくれんのよ。
だけど然して腹は立たない。
むしろ嬉しい。
拗ねたみたいなその顔も、羞恥に染まる眦だって可愛いなあと思ったから。
「ね。初めて、ほんとにあたしが貰ってもいいの?」
気付けば、強請るように口走っていた。
わざとらしくも胸を押し当てた――その、刹那。
劣情に色濃く染まった日番谷の双眸。
一瞬にして、きらめく翡翠の濃度が高まり息を呑む。
こくと動いた喉仏。
…あ、かわい。
また見惚れるより先に、その腕の中に抱き潰されて。
絡み合うようにしてベッドにふたり、倒れ込んだ。
軽くぼふとバウンドした身体。
ちっこい割には、重い。
固い手のひら。
節くれだった指。
もどかしげにシャツの裾をたくし上げられるのがこそばゆくて、愛おしいような気持ちになった。
「ん。いいよ、日番谷。好きにして」
ゆっくりでいいよと囁く傍からくちびるを塞がれ、どうぞとばかりに明け渡した身体。
――結果、勢いのままにそのままふたり、一夜を共にしたわけである。
以来、何となくだけど続いているこの関係。
とは云え、付き合おうとか、好きだとか。
そんなニュアンスの言葉を言われたわけじゃあないんだけれど。…ないんだけど。
何となく、離れがたいなと思ってしまったから。
このまま終わりにするのも勿体無いなあ、嫌だなあと、あたしが思ってしまったから。
だってそのぐらいには相性は良かった。
うん、上手い下手で言ったら、確実に下手の部類なんだけど。
(まあまあそこはね、何しろついさっきまで童貞だったわけですし?)
でも、最初からキスは悪くなかった。
触れる手のひらも、気持ちが良かった。
初めてにしては充分過ぎる交わりだったんじゃないかと思うのよ。
それに元々仲は良かったし、仕事でも今はコンビを組んでるわけですし。
一緒に居る時間は長かったから、その延長で仕事上がりにふたり、ご飯を食べに行くことも間々あった。
その際に、ホテルに行くとかあたしの部屋に泊っていくとか、そーゆーことが増えた?みたいな。
だから、多分。
いちいち口には出さないけれど、一応あたし達付き合ってんのかなー…なんて。
バカみたいにあたしひとりが、勝手に思い込んでいた。
…だけどそうじゃなかったんだなあ。
(そっか、いたのかずっと…好きなひと)
それじゃあいつまで経っても「好きだ」とか、決定的な言葉ひとつ言って貰えるわけがないわよねえ。
日番谷大好き!なーんてあたしに言われても、逆に困るばかりよねえ。










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あきゅろす。
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