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こんな恋のはなし 1.


どうせそんなことだろうなと思っていたから、別に今更傷付いたりなんてしないけれども。
それでも確かにちょっぴりショックは受けた。
(なーんだ。いたんだ、別に。本命のカノジョ)
うん、ホントのホントにほんのちょっぴりね、ガン!って感じでショックは受けた。
あー…やっぱりね、って思いもした。
だいたい日番谷ってば無愛想だけど、なかなかにイケメン。
背こそ百六十五弱と、成人男性としてはやや小柄な方ではあるものの、顔ちっちゃいし身体的バランスばっちり取れてるしで、モテないこともないんだろうなって思ってたのに、この年になっても童貞…って。
おっかしいなあ、どういうことよ?と、何気に疑問だったのよ。うん。
あーでも、そっか。そーゆーことかあ。
いたのね、ちゃあんと好きな子が。
片想いだけど、本命のカノジョが。
なのに、何っっであたしなんかと寝ちゃうかなあと呆れた反面、そこら辺を更に深く突っ込むためにも、「まあまあ、飲んで飲んで」と酒を注ぐ。
あんまりお酒に強くないって言っていたから、比較的口当たりのいいお酒を選んで(当然お値段もそれなりでしたけれども!)、これだったら下戸のあんたでもイケるわよって勧めてみたのだ。
飲み口まろやか、味わいはフルーティ。
だけどそこそこキツめのお酒は、ちょっと遅れて効いてくる筈。
「あ、うわ。何だこれ、すっげ甘い。つか、うめえ!」
「でしょでしょ?癖もないし、ちょっとしたジュースみたいでしょ?」
「ああ。これなら俺でも確かにイケるわ」
なあんて言って調子に乗って、どんどん杯を重ねていった日番谷は、目論見通りに酔いが回り始めたらしく。
あたしの問い掛け、誘導尋問に、あっさりと口を割ったのだった。
だけどやっぱり聞くんじゃなかったなあ…なんて、今となっては後悔しかない。
(ちぇー。せーっかくイイなと思える相手だったのに)
会社の後輩。
新入社員。
無愛想。
基本仏頂面で、可愛げの欠片も見当たらない。
だけど真面目だし、仕事の飲み込み早いし、物覚えだって悪くない。
ちょっと営業向きとは言えないかも?
なんて思ってたけど、今じゃそつなくこなす有望株。
何だかんだで先輩であるあたしに懐いてくれてるし慕ってくれてる、まあまあイイ子じゃないのと思って目を掛けていた。
ぶっちゃけ、ちょっぴり心惹かれてもいた。
だから部署での飲み会の後、ふわふわとした酔いどれの足取りでふたり、駅へと向かう途中で足を止め、気付けばどちらからともなくくちびるを重ねていた。
吐息に混じる酒精と、混ざり合う体温。
ぎこちないぐらいのくちづけに、けれど心は酷く震えた。
身体の熱が高まったから。
「…ね。寄ってく?」
あたしの方から誘ったのだ。ホテルへと。
日番谷としたいなと思ったから。








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あきゅろす。
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