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10.


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――傍から見れば、バカップルそのもの。
だけど真実はただのお芝居であって、日番谷の本命はちゃんと別にいらっしゃるので。
「ごめんね、日番谷。ありがと、さっきはすっごく助かった!」
ちょうど人気も人目も途切れた裏庭で、あたしが繋いだその手を解いたのは当然のこと。
勿論名残惜しくはあったのだけど、何しろこれはただの『フリ』なので。
日番谷くんにはちゃんと『本命』のカノジョがいらっしゃるようなので。
何ごとも引き際は肝心よね、と。思って繋いだ手のひらの力を抜いた。…筈、だった。
(…ん?)
なのに今以って右手が自由になってないのってどーゆことだ。
そう思って視線を落とせば、未だあたしの右手のひらは、日番谷の手に握られたまま。
…うん、わかってたけどね!
てっきりあたし、離したつもりが離せてなかった?
未練がましく握ってましたか?とも思って、一応確認してみた次第である。
いやでもこれってどーゆーことかな?
だってあの場を後にした今、これ以上カレカノ芝居を続ける必要なくない?
手、繋ぐ意味もないわよねえ。
それに、アレだよ。あの子だよ!
わあ、置いて出てきちゃったってことだよね、これ。
さすがにちょーっと不味くないか?
(いや、マズイでしょう!)
日番谷にここまでさせておいて何だけど、これはアレだ。お前のせいでつまんねえ勘違いされたしどうしてくれんだよ?!的な反応された、前の失恋とほぼ同じパターンではないですか?!
思い至ると同時に、ザッと青ざめたのは言うまでもない。
そうだ、とにかく早くあの子の元に戻って貰わなくっちゃ!
そんでいらん誤解は解いて貰わなくっちゃ!
「っひ、日番谷あ!」
「は?今度はなんだよ」
「あんたさっさと戻んなさいよ!」
「…ッはァ!?」
「あたしのことならもう平気。大丈夫だから、ほら…心配してると困るし、カノジョ!てゆか、今のはちゃんと誤解だって言っといてよね!」
あたしのせいでフラレた!って、後で逆恨みされても困るし、と。
からかうように笑ったら、一瞬きょとんと目を丸くした日番谷が、今度こそ「っはあああああ!?」と大声を上げたから。
「カノジョ…って、誰のことだよ!?」
と、逆に聞き返されてしまったから。
(…あれ?)









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