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3.


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隣町にある『お嬢様学校』と名高い女子高の制服を着た、日番谷の中学時代の同級生だと云うその女の子の出現に、当然ながらあたしの脳裏に蘇ったのは、嘗て味わった苦い失恋の記憶に他ならない。
ぐるぐるぐるぐる走馬灯のように蘇る、トラウマそのものの記憶の数々に、咄嗟過剰なまでの防衛反応が働いたのも無理からぬことと思うのだ。
(だってだって、お似合いなのよ!)
めっちゃくっちゃに、見るからに!
明らかにお似合いなんだもんーーっ!!
あたしとは真逆も真逆、日番谷より小柄な身体も華奢な手足も、流れるような黒髪も。
どこか小動物を髣髴とさせる、如何にも癒し系って感じで、最早ぜんっぜん違うんだもん!
あー、あたしとは別の意味で男子が好きそうな女の子だなあ。
うん、これじゃあ張り合ったところで到底勝ち目はないかな?
結果だって見えてるよね?と、容易く悟ってしまえるぐらいには。
あっさり白旗を掲げてしまうぐらいには、並ぶ日番谷とお似合いだったからに他ならない。
――本当は。
今日の文化祭に乗じて告白しようとか思ってたんだけど。
その為に極力いつも通りを装いながら、その実なけなしの勇気を振り絞って、頑張って。
「ね、文化祭一緒に回らない?」
って、日番谷を誘ってみたんだけど。
…なんかもう、今更!無理ーっ!って感じ?
なんとゆーか、女の勘が「やめとけ」って言っているのだ。
(うん、そうよね。やめとくべきよね、潔く)
だってどう考えても負け戦だよ、これ。
一応一緒に文化祭回るって約束までは取り付けたけど、調子乗って告白…とか、ね。どう考えても無謀ですよ。
(うん、だって今考えれば日番谷ってば、声かけた時にすっごい驚いた顔とかしてたもんね。どこか歯切れが悪かったもん)
わー、あれってばあたしの見間違いなんかじゃなかったんだ、やっぱり!
思い過ごしなんかじゃなかったんだーー!!
てことは、これってやっぱり牽制?
相手あたしだし一応先輩だし、立場的に後輩だし断りにくいし、結局押しに負けて一緒に回ることにはなったけど、俺ちゃんと他に好きなヤツいるし…的な、あたしに向けての牽制ですかね、やっぱり?
しかもあたしが「じゃあ、時間になったらクラスまで迎えに行くから!」って予め言ってあったと云うのに、その約束の時間ぴったりに他の子といちゃついてるとか、どう考えても牽制だよねこれ。
おかげでとっくに時間だと云うのに、声もかけられない。
況してや待ち合わせた教室の中に入って行くにも行けない、行き辛いったらありゃしない。
開け放たれた教室のドアの向こうにこっそり隠れて、中の様子を窺う始末だ。わあ、惨めー!
…あ、ちょっとこっち見ないでよね、通りすがりのそこのキミ。てゆか、無視して。無視してくれていいから、あたしのことは!居ないものと思ってください、マジで!!
廊下を行き来する人すべてから、不審な目で見られつつも何とかその場をやり過ごして、もう一度。窺うように教室の中を覗き見る。
覗き見た先日番谷は、未だ件の彼女と肩を並べて談笑している。
廊下の向こう、すぐ傍で、あたしが聞き耳立てているとも知らないで。
それがまた地味に凹むのよう!








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あきゅろす。
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