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2.


あたしは全然知らなかったんだけど、彼の部活の後輩で、あたし同様やっぱり彼に想いを寄せている1学年下の女の子がいたらしいんだけど、その子があたし相手じゃ敵わないからって、いつしか彼から距離を置くようになったらしいのだ。
――そうしたら。
どうやら気付いてしまったらしいのですよ、距離を置かれて初めて自分がその後輩の女の子のことを好きだったと云うことに!
(わー、なんっって少女マンガの世界!)
彼女とは何でもないんだ、仲がいいのはただのクラスメイトだから!
俺が好きなのはお前だけだ、信じてくれ!
…とか何とか、言ったとか言わなかったとか。
後日風の便りに聞きましたよ、ええ。
すっごいですね。
これぞ、『THE☆少女マンガのヒロイン』ですね。主役ですね。
そんであたし、めっちゃくっちゃ当て馬ですね!
ただのクラスメイト扱いってことは、敵役にもなれない、最早お笑い種の『モブA』ですね!
うーわー、もお何よそれ何よそれ、なによそれえええええ!!
そんなにこのケバイ顔が悪いのか!?
男好きする身体が悪いのかああ!!
一度ならず二度までも、あたしとんだテンプレモブじゃない。
良くて主役ふたりの恋路を邪魔する敵役じゃない。
てゆか、また失恋だしーーっ!!
さすがにこれには大いに凹んだ。撃沈だった。
暫くの間やさぐれなかった筈もない。
正直恐くて次の恋なんて出来なかったし、好きなひとすら作れなかった。
そもそもあたしに人並みの真っ当な恋愛なんて出来ないんだと思い込んで、そう云った恋愛ごとから目を背けていた。
色恋沙汰にはとんと無縁は生活を送るに至ったのだけど。…だけれども。
――今あたしは改めて、三度目となる恋をしている。
てゆーか、目下絶賛片想い中だ。
(うん、懲りてないよね!バカだよね!!)
お相手はなんと、ひとつ年下の部活の後輩で、顔立ちは決して悪くないんだけど、無口で無愛想。目付きが悪い。
おまけにちょっぴりちみっ子の男の子。
部活中、おひさまを受けてキラキラ光る、銀色の髪がキレイだなーって目にするたびに気になっていた。
気付いたら好きになっていた。
「松本センパイ」って呼び掛けられるのが、こそばゆくも大好きだった。
一年の癖に剣道部のレギュラーで、頭も良くってそんなところも凄いなって尊敬していた。カッコいいなと思ってた。
すっごく可愛がっていた。
尤も向こうにすれば、最初の内こそ「なんだコイツ」って目であたしのこと見てたみたいなんだけど。
それでも一緒に居る内に、ちょっとずつ打ち解けていってあたしのことも認めてくれて、今じゃ自他共に認める剣道部一の『でこぼこコンビ』と呼ばれるようにもなったのである。イエイ!
とは云え、何気に口は悪いし生意気だしで、頭にくることもしばしばだけど。
居心地はいいし、一緒に居て気楽だし、顔は好みのタイプだしで…そりゃあコロッと落っこちますとも!
好きになるのも当然ですよ。
だけど悲しいかな、前ふたつの失恋が今以って酷いトラウマになっていて、なかなかどうして…告白出来ない。最後の一歩が踏み出せない。
(何しろ二度あることは三度あるって言うからね!)
事情を知ってる昔からの友達なんかは「えー。あの子だったら別に大丈夫じゃない?」って言ってくれもするんだけど。背中を押してもくれるんだけど。
どうしたって二の足を踏む。
(しかも今回あたしの方が年上だしね!)
(あたしの方が背が高いしね!!)
なんかもう全然報われるような気がしない…。
てゆーか、端からあたし、対象外じゃない?除外じゃない??
仲いい先輩って枠組みだけで終わってないか?!
これでまたも当て馬、モブA、テンプレ敵役辺りにされた日には、いい加減恋愛恐怖症に陥りそうだ。
そう思っては躊躇して、なかなか好きだとは打ち明けられないまま傍に居た。
そうこうしてる間に季節はすっかり秋へと移り変わって、片想いも半年を過ぎて。
なのに、好きの気持ちはどんどん大きく育っていって…。
だからやっぱり一歩踏み出したいな、ちゃんと好きだって伝えたいな。
それであわよくばお付き合いとかしたいなと思ったから、よっしゃ!告白したる!!とこれまでのトラウマを吹っ切るように漸く重い腰を上げるに至った――矢先のことだった。


「あ、シロちゃん!」


――伏兵が現れました。










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あきゅろす。
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