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正しい愛の光らせ方 1
※『ダーリンミロード』の日番谷サイド。


「じゃあまた、金曜。店で待ってる」
「うん、またね!…てゆーか、寒うっ!!」
「ンな薄着のまんまで見送りとか、さすがに風邪引くぞ松本サン。いいから部屋入ってろって」
「うう…でもお」
「駅まで出ちまえば、後すぐだしな。平気だから、早く入れって」
「うう、…ごめん」



またね、って。
名残惜しげに引き下がった彼女の肩を抱き、最後にもう一度くちびるを重ねる。
白い胸の谷間を彩る鬱血の跡に目を留めて、思わず緩んでしまう頬。
押し隠すように口元を引き締めてから距離を置き、またなと返して温かな部屋を後にする。
一歩アパートの外に出た途端、頬を掠めた冷気に思わず肩を縮める。
「寒っ…」
さすがに積もるまではしないまでも、雪は未だ降り続いていて。
マフラーをしていても寒いもんはやっぱり寒いなと眉を顰める。
駅までは歩いて十分程度の道のりだし、電車に乗ってしまえばほんの二駅で地元に着く。
そこから家までは歩いて五分と掛からないから、まあ…これだけ寒くとも風邪を引くようなことはないだろう。
実際のところ花粉なんだか風邪気味なんだか知らねえが、朝から少々頭痛がしたので今日は早めに家に帰って休むつもりでいたのだが、そうも言ってられない事態が起きた。
おかげで一瞬にして頭痛も吹っ飛びやがったのだから。
(まあ、無理した甲斐はあったよな)
おまけに思いがけず平日から、彼女の身体を味わうと云う大変オイシイ思いも出来たのだから、これを不幸中の幸いと呼ばず何と呼ぶ。
再びニヤけそうになる顔を無理やりのように押し留め、出てきたばかりのアパートから、五百メートルほど離れたところでふと思い出したように取り出すスマホ。
――時刻はちょうど二十二時。
(どう考えてもまだ『店』やってる時間だよな)
…けど、まあ。
今夜は週も半ばの水曜で、更には雪がちらついていると来てる。
となればそうそう客もいないだろうとの当たりをつけて、履歴からとある番号を呼び出した。
何コールかして出ないようなら諦めるかと、夜空に吐き出す白い息。
だが、果たしてすぐにも相手は電話に出た。
「はいはーい、こんな時間に何の用かな、日番谷くん」
知ってて惚けたような口をよくも利く。
思わず舌打ちが出かけたものの、今夜ばかりはそれなりに世話になった自覚があるからここはひとつ、一応下手に出ておくことにする。
「用…っつーか、助かった。てことで、リークしてくれた七緒さんにお礼言っといて」
「ああ、はいはい。『彼女』の件ね」
「ん。なんつーか、…やっぱ思ったより凹んでた」
苦々しくも口にしながら、ふと思い出す。
――ね。もしかして、この為にあたしに会いに来たの?
酷く寂しげな声で問うて来た、今にも泣き出しそうな悲しげな顔を。
アパートの前で待ち惚けていた俺を見つける直前まで、果たして自分がどんな悲痛な表情(かお)して歩いていたのかなんてこと、きっと気付いていないんだろう。









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