[携帯モード] [URL送信]
14.


余りにも意外過ぎて、思わず言葉を失くしてしまったではないか。
相対する王様も、さすがにハッと我に返ったようで、しまったとばかりに顔を顰める。
けれどそのしかめっ面からしてもう真っ赤なのだから、照れているのは一目瞭然。
なんとも微笑ましいではないか。
(ラッブラブでいいなあ、…なんて)
思っちゃったのも無理はない。ないんだけれど。
…なんとなく。
そんなリア充全開の王様の様子に、ちくりと胸が小さく痛む。
そうまでして気に入られている、愛されている妹のことが、羨ましいなと思ってしまった。
(あたしなんて、いったい何が気に障ったのかもわからないままに、二度と王宮に上がるな、なんて。命じられるほど目障りに思われているらしいってのに…)
せいぜい花嫁修業に精出して、さっさと結婚相手を見つけろよ的な意地悪なことしか言われないのに…。
ああ、あの子ってばものすっごーく愛されてんのね、このひとに。
王様も、本当にあの子のことが好きなのね・って思ったから、それじゃああたしも協力してあげるより他ないかしら?
ふたりの逢瀬の橋渡し役を引き受けるより他ないかしら?って思ったから、わかりましたと頷いて見せた。
どうぞお好きなように、自由に出入りして下さい、と。
出入り口としてこのベランダを提供することに決めたのだった。
だからそれ以来あたしの寝室の大きな窓には鍵が掛けられたことはない。
…そりゃ、ちょっと恐いかな?さすがに無用心かな?って思わないこともないけれど。
元々そこまで治安も悪くは無いし、さすがに日付が変わる時間になって訪ねてくるようなこともないだろうから、眠る直前にでも緩く鍵を掛ければまあいいだろうと思ったのだ。
とは云え夜会に関しては、やはり全く顔を出さないわけにも行かない。
(とゆーか、将来的な意味でむしろあたしが困る)
王様にもさっき言ったけれども、まあね、一応結婚相手ぐらい自分でも吟味したいものねえ?
けれど王様の言い置いていった『お仕置き』と云う不穏な言葉にちょっと恐怖を覚えたので、先ずは極力数を減らしてみようと思った。
仮に夜会に出たにしても、余り長居をすることもなく、余程のことがなければ早々屋敷に戻るよう努めたつもり。
(まあ、もともと面倒だなって思ってたし?)
そりゃあ、顔を売って良き伴侶を見つけられるよう努めるに越したことはないけれど。
何度か足を運ぶ内に、単に上辺だけを取り繕って互いを化かし合ってるばかりな場所のような気がして、正直気疲れもしていたからちょうど良かったのかもしれない。
そう考えたらほんのちょっとだけ気が楽になったような気がする。
(ま、最悪政略結婚ってことになるかもしれないけれど、そうなったらそうなったで仕方が無いかと諦めもつくし?)
例えばお父様ぐらい年の離れた方がお相手であるとか、既に愛人を三人も四人も囲っているようなひとでなければ、ギリギリ我慢も出来ると云うものだ。
…うん。そりゃあ、ね。
王様と桃みたいに、互いに想いを通わせ合っての結婚を羨ましいと思わないでもないけれど。
あんな風に愛されたいな。
あたしも大事にされたいな〜、とか…思わない筈もないんだけれど。
キリキリと胸が締め付けられるみたいな痛みを何故か、感じないでもなかったけれど。
それでもその全ての感情に蓋をして、命じる相手は王様だからとあたしはこの部屋を通じての行き来に了承をした。
幼いふたりの恋を応援することにしたのだけれど。
(これはいったいどう云うこと?)








[*前へ][次へ#]

15/38ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!