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8.


ま、それもそうよね。
あたしも部屋にいなかったんだし、そりゃあ先にあの子の元へと行くわよねえ?
(だってその為にわざわざお城を抜け出して来たんだものね)
…あれ?
でもじゃあ、なんでこのひとここにまだ居るのかしら?と思ったものの。
「で?そーゆーお前は、今夜は夜会か何かだったのか?」
話をあっさり切り替えられて、それ以上会話を深追いするような雰囲気でもなくなったから、とりあえず。
こくりと頷き肯定を示す。
途端、ムッと顰められた眉。
いやいや、そんなおっかない顔されましても…。
これも淑女のたしなみのひとつですし?
況してやあたし、目下適齢期真っ只中なワケですし?
いい加減花婿候補のひとりやふたり、見繕わなくちゃあならんのですよ。
王様の元に嫁ぐことが半ば決定済みのあの子と違って!
…そう、あたしはあの子とは違うのだ。
最初から王様に好意を抱かれていたあの子と違って、あたしは結婚相手を見つけるために行きたくもない社交の場へと足を運んで、ここぞとばかりに顔を売り歩かなくてはならないのだ。
当然と云えば当然だけど、なんとも不公平な話よねえ。
腹違いとは云え、おんなじ姉妹でこの扱いの差!
(ああもう、リア充爆発しろっ!)
だから年甲斐もなく、半ば不貞腐れ気味に口にした。
「っそ、そりゃあ…まあ、そろそろあたしも適齢期ですし、出来たら親の決めた相手よりも、自分でいいなと思える相手を見つけてお嫁に行きたいなって思いますもんっ」
そしたら更に苦々しげに、王様がチッと鋭い舌打ちをした。
「……っだよ。余所見すんなってあれほど釘刺しといたじゃねえか」
「は?」
然も面白くないとばかりにぶちぶちと、何やら文句を口にしているらしい王様は、不機嫌なことこの上ない。
けれどいったい何を言っているのか、何度聞き直したところで「…何でもねえ」と一蹴されるばかり。
まったく以って、意味不明なことこの上ない。
腹立たしいことこの上ない。
だけど言っちゃ悪いけど、面白くないのはあたしだっておんなじなのだ。
何しろ今夜も夜会だった。
おかげで今、ほんっっとーーに疲れ切っているのだ、あたしは。
――夜会だ何だと貴族同士の集まりに顔を出すようになって、早四ヶ月余り。
正直なところ、『苦痛以外の何ものでもない』と云うのが今のあたしの本音である。








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あきゅろす。
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