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7.


「っそおおおですよねー、以前にもお忍びでお城抜け出して来て、勝手に窓から部屋へと入り込んで来た王様の仰るお言葉ですもの。そりゃあ信憑性もありますよねえ」
お気遣いどうもありがとうございます、と。
殊更厭味と皮肉を織り交ぜてはみたものの、王様と来たら余程ツラの皮が厚くていらっしゃる。
実に涼しげな顔をして、フン!と鼻を鳴らすばかりだ。
(うわ、もお!まったく可愛げのない!)
ああでも何となく今の話の流れでわかったような気がする。
ベランダの傍に生えた大きな木。
更には無用心にも開けっ放しだった部屋の窓。
きっと過去、「なんで城に来ない」とあたしを詰りに来たあの日。
この部屋へと窓から入り込んだ経験から、あたしの部屋を使っての『出入り』が一番手っ取り早く、また面倒が無いとでも考えたんだろう、王様は。
(これってやっぱり、アレよねえ?)
口ではあたしに会いに来たとか抜かしてるけれど、多分…完全に違うわよね。
あたしに会いに来たんじゃないわよね、これ。
何しろ、前国王様が崩御されてからまだ半年余り。
きっとまだまだやるべき仕事は山ほどあって、当然だけどその間、ゆっくり休めてなんていないんだろうな。
(見れば、半年前よりちょっぴり頬がやつれたような?)
ふくふくまんまるだったほっぺたは、少しだけ肉が削げて見える。
「お疲れみたいですねえ、王様」
「ああ、まあ…ここんとこ全然休めてねえしな」
思わず問い掛けてしまったのだけど、否定されなかったことにまたひとつあたしは『確信』を得る。
「お仕事が嫌で、お城抜け出して来ちゃいましたか?もしかして」
窺うように改めて切り出したなら、一瞬大きく瞠る瞳。
垣間見せたその表情に、ああやっぱりなと心中会得がいって、漸くあたしはホッとした。
――そりゃあそうよね、幾ら即位したとは云え、まだまだ十二のお子ちゃまだもの。
ほんの半年前までは、同い年ぐらいの子ども達を王宮に呼んでは遊んでいた、庭を駆けずり回っていた、やんちゃ盛りだったんだもの。
そりゃあそろそろ嫌気も差すでしょうよ。
況してや一番のお気に入りだったあたしの妹とも会えなくなって、寂しくなっちゃったのかしら?なーんて思って微笑ましくなった。
だからきっと会いに来たんだろうなあ、…あの子に。
王宮を抜け出しお忍びで、嘗て知ったるあたしの部屋を出入り口に、妹に会いに来たんだろうなと思って納得がいく。
思わずうふふと笑みが零れた。
「つか、キモイなお前」
「あ!そおおんなこと言うんだったら、桃の部屋に連れて行ってあげませんよ?」
いいんですかあ?と意地悪を言えば、何故かきょとんと目を瞬かれた。
ンなもん別に必要ねえ、と。
あっさり躱されてしまったから、どうやら既に桃の元には顔を出した後と思われる。
(なーんだっ!)








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