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3.


いやいやそれ以前に、ちょっと待ってよ。
だってここってばあたしの家だ。あたしの部屋だ。
(なのになんでアンタがここに居る!?)
しかも王宮に来ないことに言及されてるって…どーゆーことだ?!
そもそもあたしは単なる妹の付き添いであって、完全なる『オマケ』として今回王宮に上がっただけで。
王子様の遊び相手としては、全くの範疇外。
その証拠に王子様ってば、あたしのことなんてガン無視してたし、終始気に入らないって顔をしていたんじゃなかったか?
況してや王子様が気に入ったのは妹の『桃』であって、そこにあたしが付き添いとして着いて行こうが行くまいが、全く以って関係なくない?!
そんな戸惑い半分、躊躇いながらに問い掛けた。
「…あたし、王子様相手に首根っこ掴まえたり怒鳴りつけたりしたような女ですよ?」
「それならとっくに不問にしたろ」
「だいたいあたしみたいな五つも年嵩の女と遊んで楽しいです?」
「威勢の良さと度胸の良さは、見ててなかなか飽きねえな」
などと、ああ言えばこう抜かしてくれるこの王子、やっぱりちょっと…おかしいと思う。
「あと!お前、干し柿好きなんだろ?俺はアレが大ッッ嫌いだから、俺の分までお前に食わせてやる!」
などと、ひとを残飯処理の如くのたまう辺り、ホンット頭にくるんだけれど。
誰が干し柿に釣られて王宮なんぞに行くかああああ!!と、怒鳴りつけてやりたいところだけれど。
今ここで下手に逆らえば、後々お父様とお義母様から何を言われるかわかったもんじゃないなと思って諦めた。
苦渋の決断で以って、…わかりました、と。
次のお招きの際は、是非とも妹と共にお邪魔させて頂きます、と。
伝えて早々お引取り願った次第である。
よって『妹姫の付き添い』と云う名目で、その日を境にまた再び、王子様の遊び相手のひとりとしてあたしも王宮を訪ねることになったのだった。
とは云え、王子様のお目当ては、あくまであたしの妹である。
王宮に上がったあたしがしていることと云ったら、ふたりが仲良く遊んでいるのを主にぼーっと眺めているぐらいのものだ。
以前のようにあからさまな無視をされるようなことは無くなったものの、さりとて王子様と特別仲が良くなったとも言い難い今、正直この時間を「有意義」とは言い難い。
むしろ拷問?
むしろ早く帰りたい気持ちでいっぱいである。
(まったく、お忍びでのあの押し掛けは何だったのよ)
これが呆れずにいられようものか。
だからと言って、あたしが退屈しのぎに他の子達とお喋りしたり遊ぼうものなら、途端「松本!」と、苛立ちも露に声をかけてくる。邪魔しに来る。
然も気に入らないとばかりに不貞腐れたような顔をするから、ますます以って不可解なのだ。
「ついて来い、松本。美味い焼き菓子を食わしてやる」
今もぐいとあたしの手を引いて、女の子同士お喋りの輪から、強引なまでにあたしを連れ出す。
振り返ることもなく、ずんずんと前をゆく。
…ええっと、美味しいお菓子が頂けるのは嬉しいんですが、なんなんですかねその態度。
どうせだったら他の子達も一緒に誘った方が良くないですか?
てゆーか、そもそも何であたしだけ??








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